「月に一回は有休を取りましょう。」
「残業は1分単位で付けましょう。」
こうした会社を、端から見ればホワイト企業と見えるだろう。
制度は制度として有り難いが、それを導入した理由は、有給取得率の低さであり、サービス残業なのだ。
というより、そもそもこれは「有り難い」ことなのか。
「当たり前」ではないのか?
「いや、普通の会社はそこまでしっかりしていないよ?」
だとしたら「普通」がおかしいのではないか?
「昔に比べれば、労働環境はかなり良くなったよ。」
いや、せめて労働環境を整えなければ、割に合わないのではないか?
「昔の労働環境」、その名残が残る2000年代に働いたときに感じたことだが、高度成長期で大量生産、終身雇用はまだ成立してる安心感からくる「緩さ」が、あらゆる業種の諸先輩方から感じられた。
「余裕」ではなく「緩さ」を感じたのだ。
現に「今の方がいいのか?」と質問してみると、「昔の方がよかった。」と答える人が多かった。
もう一つ、踏み込んで聞いてみると、「なんとなくの自由」がそれぞれにあったのだ。
「なんとなくの自由」?
つまり、自分のタイミングでタバコを吸いに行って、打ち合わせという「談笑」は長引き、会社にいる時間こそ長かったが、仕事してる時間は今より短かったかも、、、。
そんな感じだった。
要するに、ある程度の「自分主体の時間」が許されたのだ。
自由ほど、仕事の幸せを左右する要素はない。
ちなみに、会社の自由度を調べた台湾の研究で、「作業のスケジュールを好きに設定できる」、「業務の内容を好きに選べる」、「収入や社内ルールに好きな意見を言える」といった職場の自由度が高いほど、仕事への満足度は上がって、離職率が下がることが分かっている。
さらに被験者は、「ストレスの大きな作業」をしている時も、ネガティブな気持ちになりづらかったのだ。
それとロンドン大学が公務員に行ったリサーチだと、「タバコを吸うが、自由度が大きい職場」よりも、「タバコを吸わないが、自由度が小さい職場」の方が体を壊しやすく、慢性病にかかる確率も高いことが分かった。
さて、制度さえ整えたらホワイト企業で、社員も満足。
そんなことはない。
給料も上がらず、終身雇用は崩壊、貯金もできず、ただ日々の生活を成り立たせるために働くのでは、余裕があるなかで、昔の方がよかったという「なんとなくの自由」などありはしない。
心のダメージこそ、いちばんのダメージ。
今の時代、自分にとって働いてる場所が辛い場所であれば、そこはブラック企業に他ならない。
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本書から抜粋。
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