146-レイ・アレン
2003‐04シーズン、レイ・アレンがゲイリー・ペイトンとのトレードでシアトルに移ってから1試合の平均得点は21.3点から24.5点にアップし、チームもトレード以降の30試合18勝12敗と勝ち越した。
新シーズン、カール・マローンらを失ったジャズがプレーオフ争いから消えるとは言われたシーズンとはいえ、この頃のウエストはハイレベル。
2004-05シーズンのシアトルスーパーソニックスの開幕予想はディビジョン最下位だった。
そんなチームを率いるのがマクラミンHCだが、00-01シーズン途中にHC就任以来、マクミランHCに十分な人材が与えられたとは言い難い。
しかしながら、3ガードや、センターを外して2ガードー3フォワードで戦う術を、 彼は探り続けてきた。
マクミランHCは、それを利用するしかなかった。
フロントによる度重なるトレード、FA戦略の失敗から、同じポジションに何人もの選手が固まるいびつな選手構成。
この年のソニックスは、”サプライズチーム”(驚きのチーム)と言われたが、マクミランHCにしてみれば、それを利用するしかなかない。
スモールラインナップだからこそできるスピーディな速攻を多用し、ディフェンスでもクイックネスを生かしたローテーションを徹底させた。
そして、サイズのなさを補ったのは、アウトサイドシュート。
アレン、ルイス、ラドマノビッチらが、積極的に3ポイントを狙う。
本来FG%を重視するチームながら、その確率に多少目をつぶっても、リーグ5位(・365)の3ポイントシュート で得点を重ねた。
そしてポイントガードに2年目のルーク・リドナーを指名。
ベテランのアントニオ・ ダニエルズは、口にこそ出さなかったが、不快に思ったに違いない。
ウラジミール・ラドマノビッチも先発を望んだが、スモールフォワードにはルイスがいて、シックスマンにとどまった。
理解を示さないロナルド・マレーに対しては、ほとんど出場時間を与えないという、非情さもマクミランHCは見せた。
おそらくマレーはスタメンで出場すれば、17〜18点は稼げる選手。
しかしながら、ボール支配欲は人一倍で、ディフェンスにも興味を示さず、そこでマクミラン構想から外れた。
そんな中、開幕戦でクリッパーズに大敗すると、不協和音が漂い始めた。
ところが、2戦目から9連勝。
シューター揃いのアンバランスな攻撃陣が揃うチームが、最初の20試合を17勝3敗と最高のスタートを切った。
ダニエルズ、ラドマノビッチは、25分以上のコンスタントな出場時間を与えられ、快進撃の両翼に。
もちろん、コート上にアレンがいなければ、マクミランHCのシステムもどこまで機能したか分からない。
マクミランHCの構想では、ボールをシェアできるリーダーが必要で、ここぞというときにはアイソレーションで得点できる選手が不可欠。
ジャンプシューターのイメージが強いが、アレンはゴールにアタックすることもでき、コートのどこからでも相手を仕留める完全無欠の狙撃手は、このオフェンスシステムにおいて理想的だった。
ただ、そこに不満が出なかったわけではない。
例えばルイスは、公然とボールをタッチする機会が減ったと、マクミランHC、アレンに対して、背を向けたこともある。
しかし、アレンはルイスに「チームプレーの大切さ」 を自ら説いた。
そのために昨シーズンのほとんどを費やしたといっても過言ではないが、今季に入って、ルイスもようやくそれを理解したのだった。
そしてオールスターにはアレンとルイスとそろって出場し、レギュラーシーズンを両輪で引っ張り、見事プレーオフに進出した。
ケガ人続出で危ぶまれたプレーオフ前だが、キングスを破って1回戦突破。
スウィープを予想されたスパーズ戦では、ゲーム6まで粘った・・・。
最後のショット。
決めれば逆転勝ちという3ポイントは、リングに嫌われた。
その瞬間、 アレンの頭には、素晴らしい1年がフラッシュバックしていた。
「これだけ、お互いを理解しているチームだからこそ、ここまで来れた」
「これで終わりなのかと思うと・・・」
ウェスタン・カンファレンスのセミファイナルで、スパーズに2勝4敗で敗れた夜、そう言って、言葉を詰まらせた。
追伸、「本当にいいチームだった。最後にハドルを組んだとき、そんなことが、ふとよぎってね」 アレンの瞳には、涙があふれる。
鼻をすすれば、その声が、涙声に変わった。
アレンはこれだけ充実したシーズンを、ありきたりながら、「チームワーク」のおかげと言った。
「それぞれの選手が、それぞれをサポートする。こんなチームでプレーしたのは初めてだった」。
ソニックスの顔だったゲイリー・ペイトンとのトレードで加入したアレンは、ペイトンの残像と戦うことになる。
ファンは当然、フランチャイズプレーヤーとしてのチームを勝利に導く働きに期待しているだけに、アレンの肩にかかるプレッシャーは相当なものだった。
しかし進化が問われる新生ソニックスのリーダーは、全盛期をソニックスで過ごし、歴代屈指のシューターとしてNBAに名を残すことになった。
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