NBAポスターコラム45:リバウンドで勝利を引き寄せた“影の英雄”ベン・ウォレス、その真価とは…。

NBAポスターコラム

45-ベン・ウォレス

ベン・ウォレスのリバウンドは、スラムダンク・赤木の“教え”の体現だった

NBA史に名を残す名リバウンダーは数多くいるが、ベン・ウォレスほど“戦士”の名がふさわしい男も珍しい。シュート力や派手なオフェンススキルはなくても、勝利に最も必要な「地味で泥臭い仕事」を誰よりも真摯に遂行し、チームに勝利をもたらした存在。今回は、彼のリバウンドに焦点をあてて、強さの秘密を掘り下げてみよう。


リバウンドの鬼、ベン・ウォレス

ウォレスのリバウンド能力は、天性の身体能力と後天的な努力の融合だ。身長は公式で206cmと、NBAのビッグマンの中では小柄だが、それを感じさせない跳躍力とタイミングで、幾度となく「巨人たちの中の支配者」となった。

特筆すべきは、リバウンドへの執着心。リングに弾かれたボールに対して確実に確保するため、適切なポジション取り、相手を押し出す筋力と持久力で最後の一本を手にする。この「スクリーンアウト」は、まさに『スラムダンク』で赤木剛憲が桜木花道に語った“リバウンドの奥義”そのものだ。


「ただ跳ぶだけじゃ、リバウンドは取れん」

赤木の言葉を思い出そう。

「リバウンドってのは、跳ぶ前から勝負は決まってるんだ」

まさに、ベン・ウォレスの真骨頂。彼のリバウンドは「跳ぶ」こと以上に、「予測」と「準備」で勝負が決まっていた。シュートが放たれる瞬間のフォーム、回転、位置関係、相手のクセを観察し、ボールがどこへ落ちるかを直感的に読んでいた。

さらに、彼は単にポジションを取るだけでなく、味方ガードの動きや相手のフォーメーションまで計算に入れ、チーム全体のディフェンスのバランスを保ちながらリバウンドに飛び込む。


スタッツ以上の存在感

ウォレスはキャリアを通じて平均9.6リバウンドを記録し、4度のリバウンド王に輝いている。だが、数字では測れない「流れを引き戻すリバウンド」が彼の真価だ。

例えば、2004年のNBAファイナル第3戦。レイカーズにリードされていたピストンズが流れを引き寄せたのは、ウォレスが3本連続でオフェンスリバウンドをもぎ取ったシーンだった。すべてセカンドチャンスに変換し、得点に結びつけていた。


「オフェンス」でも「ディフェンス」でもなく「勝利のためのプレー」

ベン・ウォレスを「ディフェンス専門」と考えるのは浅い。確かに、DPOY(最優秀守備選手)に4回も選出された守備の化身だが、彼の本質は“チームの勝利のために何をすべきか”を徹底したプレイヤーだ。

彼はオフェンスリバウンドでチームに2度目、3度目の攻撃機会を与え、守備では相手の攻撃の芽を摘む。点を取らなくても、リズムを支配できる数少ない存在だった。


「手抜きしない」ディフェンスの化身

ウォレスのプレーには、1秒たりとも手抜きがない。試合序盤だろうが、点差が離れていようが、リバウンドへの集中力と激しさは一貫していた。

シュートチェックの後は即座にゴール下へダッシュ。相手のヘルプに行っても、そのままローテーションに戻る。スクリーンに引っかかれば身体ごと弾いて出るし、パスが通りそうなら身体を投げ出してでも弾く。

こうした「数字に出ない貢献」の積み重ねが、チームの勝利への積極的な一歩となる。まさに、プレーに“逃げ”がなかった。


無名からの下克上、そして殿堂入りへ

ベン・ウォレスはNBAドラフトで指名されていない。ノースカロライナ州の田舎出身、大学も無名。最初はCBA(当時のマイナーリーグ)レベルの評価だった。

それでも、「自分にできること」を突き詰め、リバウンドとディフェンスを極限まで鍛え上げた結果、ピストンズで不動のセンターへと成長。2004年の優勝メンバーとして歴史に名を刻み、最終的にはNBA殿堂入りという栄誉も手に入れる。


若い世代へのメッセージ:努力と献身の力

ウォレスのキャリアが示すのは、才能ではなく“努力と献身”の重要性。NBAではスター選手に目がいきがちだが、彼のような「泥臭くても、チームのために全力を尽くす存在」がいてこそ、勝利は生まれる。

「俺がやってることは、誰でもできる。やるかどうかが違うだけだ。」

これはウォレス自身が語った言葉だ。飾り気もなければ、カッコつける気もない。ただ真っすぐな“リバウンドの鬼”の哲学がここにある。


最後に:数字以上の価値がある選手

NBAはどんどんスモールラインナップ化が進み、アウトサイド重視のバスケが主流になっている。だが、どんな時代になろうとも、試合に勝つには「リバウンド」と「ディフェンス」が不可欠。その最前線に立ち続けたベン・ウォレスは、時代を超えて語り継がれる存在であるべきだ。

彼のような選手がいたからこそ、スーパースターが輝く舞台が整い、チームは勝てた。だからこそベン・ウォレスは、“勝利の影の英雄”として、バスケットボールという競技の本質を体現した選手だった。

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