4-ルカ・ドンチッチ
ルカ・ドンチッチ――スロベニアが生んだオールラウンドの怪物
NBAにおいて「ほぼすべてのプレーをハイレベルでこなす選手」は非常に稀だ。スコアリング、プレイメイキング、リバウンド、ゲームメイク、勝負どころの判断、クラッチショット。それをすべて一人でこなすには、サイズ、スキル、IQ、そしてメンタルの全てが揃っていないと無理。そしてその条件をすべて満たしているのが、スロベニア出身のルカ・ドンチッチだ。
スタッツが物語る「当たり前のMVP級」
まず彼のスタッツを見れば一目瞭然。得点、リバウンド、アシストすべてがハイレベルで安定しており、毎年MVP候補に挙がるのも当然の話。例えば、2023-24シーズンは平均33.9得点、9.2アシスト、9.1リバウンド。これだけでも驚異的だが、彼が本当に恐ろしいのは、それを「自然に」やってのけるところ。
決してスタッツ稼ぎではない。彼は試合の流れを読む能力に長けていて、その中でチームにとって最適なプレーを選び続ける。得点が必要な時には積極的にスコアし、味方が空いていればピンポイントでパスを通す。勝利のために、自分のスタッツを犠牲にする判断もできる。
ポジションレスの権化
身長201cm、体重104kg。ガードにしては大きすぎる体格だが、ドンチッチはPGとしてフルタイムでプレーできる視野とハンドリングを持っている。かと思えば、ポストアップでスモールフォワードやパワーフォワードを背負うこともできるし、3ポイントラインの外からステップバックスリーを決めることも可能。つまり、彼にとって「ポジション」という概念はほとんど意味がない。
現代NBAは「ポジションレス」がキーワードと言われて久しいが、ドンチッチはその象徴的存在だ。守備のマッチアップにおいても、スイッチされようがミスマッチを逆手にとって得点できる万能さを誇る。
ピック&ロールの魔術師
彼の代名詞ともいえるのがピック&ロール。ドンチッチがスクリーンを使ってアクションを起こすと、相手ディフェンスはパニックに陥る。スイッチすればサイズの小さいディフェンダーが狙われ、ドロップすればミドルやフローター、スリーを打たれ、ヘッジすればロールマンへのアシストで崩される。
そして何より、彼の選択肢の中には“遅さ”がある。スピードで抜くのではなく、緩急と間合いで相手を手玉に取る。これはヨーロッパ的なリズムでもあり、NBAのディフェンダーにとっては極めてやりづらい。彼はスピードスターではないが、間違いなく「相手にとって最も嫌なタイプのクリエイター」だ。
ステップバック3という武器
ジェームズ・ハーデンと並び称されるステップバック3の名手でもある。ディフェンダーを足止めしてから後方に下がってシュートを打つこの技は、空間を作るのが難しく、成功率も低くなりがちだが、ドンチッチはこれを非常に高い精度で決めてくる。しかも、クラッチタイムや試合の流れを変える場面で、何の躊躇もなく放ってくるあたりに胆力を感じる。
このシュートがあることで、ディフェンダーは距離を詰めざるを得なくなる。すると今度はドライブが効いてくる。この相互作用が、ドンチッチの攻撃力を飛躍的に高めている。
バスケットボールIQの高さ
ドンチッチが特別なのは、身体的スキルではなく「思考の速さ」と「選択の精度」だ。ディフェンスの動きを見ながら、数秒先を予測し、最も効率的なプレーを選び続けるそのバスケットIQは、レブロン・ジェームズやラリー・バードに匹敵する。まるで将棋の名人のように、5手先まで読んでいるかのようなプレーが多い。
特に印象的なのが、相手の守備が乱れた“ほんの一瞬”の隙を見逃さず、ノールックで味方にアシストを届けるパスセンス。視野の広さもさることながら、「あの場面でその選択をできるのか?」という判断力の高さに舌を巻く。
チームメイトを活かす力
ドンチッチは「味方を上手く見せる選手」だ。彼とプレーすることで、ロールプレイヤーたちの能力が最大限に引き出される。リムランナーは常にゴール下で楽な得点機会を得られるし、スポットアップシューターはスペースを確保してワイドオープンで打てる。
これは単にパスが上手いというだけではない。味方の癖や好み、動き方を理解して、「その選手が一番得意な形」でパスを出すことができる。これはプレイメイカーとして一流の証であり、NBAでも数少ない「ゲームチェンジャー」の証でもある。
クラッチタイムの支配者
彼のすごさは、終盤でこそ際立つ。緊迫した試合展開の中でも冷静さを失わず、むしろギアを一段階上げてくる。2020年プレーオフのバズビータースリー(クリッパーズ戦)はその象徴。残り数秒でボールを持ち、ディフェンスをいなし、難しい体勢からロングスリーを沈めたあのシーンは、今でも語り草になっている。
クラッチタイムで得点するだけではない。相手のマークが集まった瞬間、迷いなくフリーの味方にキックアウトする判断力もある。この冷静さが、彼を単なるスターではなく「勝てるスター」たらしめている。
ただひとつ足りないのは「勝利」
じゃあなぜ彼が毎年MVPを取れないのか?答えは単純。チーム成績が足りない。MVPは「リーグで最も価値のある選手」に贈られる賞ではあるが、実質的には「勝つチームで圧倒的な存在感を放った選手」に与えられる傾向が強い。過去10年のMVPを見ても、受賞者のチームはほとんどがカンファレンストップ3に入っている。
ドンチッチの所属するダラス・マーベリックスは、彼の能力に比してチーム成績がやや不安定。そのため、どれだけ個人で支配的なプレーをしても、MVPというタイトルにはあと一歩届かない。これはコービー・ブライアントがキャリアで1回しかMVPを取れなかったのと同じ構造だ。
ラリー・バードの再来か、それとも“運に恵まれなかった天才”か
ドンチッチは間違いなく3年連続MVPを取れるだけのポテンシャルを持っている。実際、ラリー・バード以来となる3連覇に最も近い存在だとも言われている。一方で、タイミングと巡り合わせが悪ければ、MVPを1回取るか取らないかでキャリアを終える可能性もある。
ただ、それでも彼のプレーは常に人々の記憶に残る。MVPという肩書きがあろうがなかろうが、ルカ・ドンチッチという男がいかに特別な存在かは、バスケットボールを知る者なら誰もが理解している。
まとめ:すべてを兼ね備えた“現代の魔術師”
ドンチッチは単なる得点マシンではない。視野、パス、ドリブル、シュート、IQ、メンタル、そして大胆さと創造性。バスケットボールにおけるあらゆる要素を高次元で融合させたプレーヤーだ。将来、彼がどれだけのタイトルを手に入れるかはわからない。でも、すでに彼が「この時代の象徴的存在」であることは間違いない。
そしてMVPは、ドンチッチの背中をずっと追いかけている。問題は、いつ追いつくかだけだ。
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