NBAポスターコラム24:カワイ・レナードは、ただのスターじゃない。彼は“勝つための選手”だ。

NBAポスターコラム

24-カワイ・レナード

カワイ・レナード、静かなるMVP──2014年NBAファイナルの衝撃

若き“沈黙のキラー”がNBAの頂点に立った瞬間

2014年NBAファイナル。サンアントニオ・スパーズとマイアミ・ヒートという、時代を代表する2チームが再び激突した。前年の2013年ファイナルでは、ヒートがレイ・アレンの奇跡的なスリーポイントなどで逆転勝利し、レブロン・ジェームズ率いるスリーピート目前のヒート王朝が頂点に君臨していた。

しかし2014年、このシリーズの主役となったのはレブロンでも、ティム・ダンカンでもなかった。静かにチームを勝利へ導いたカワイ・レナードという男。彼の名前は、このファイナルで“歴史”と並んだ。


シリーズ前半は影が薄かったレナード

2014年のファイナル、第1戦と第2戦。レナードのプレーは決して目立っていたわけではない。得点は2試合で計18点。派手な活躍はなく、「まだ遠慮している」そんな印象すらあった。

だが、チームのベテランたち──ダンカン、パーカー、ジノビリらは知っていた。この若きスモールフォワードには何かがある。ヘッドコーチのグレッグ・ポポビッチも、それを理解していた。そして第3戦、試合前のある言葉がレナードの背中を押す。

「もう遠慮している段階ではない。」

ポポビッチが言ったこの一言が、カワイ・レナードという静かな青年の中にあったスイッチを入れた。


第3戦から爆発、レナードの本気モード

第3戦、マイアミのホーム、アメリカン・エアラインズ・アリーナ。レナードは、いきなりチーム最多の29得点を叩き出す。しかもフィールドゴール成功率は脅威の10/13。ディフェンスではレブロン・ジェームズに付きまとい、シュートのタイミングやパスの選択肢を封じ込めた。

第4戦は20得点14リバウンド、第5戦は22得点。3試合連続でチーム最多得点という数字を叩き出し、完全に攻守両面でスパーズの中心になった。

ファイナル全体を通じての平均成績は、17.8得点、6.4リバウンド、2.0スティール。数字だけ見れば派手ではないが、そのインパクトは計り知れない。シリーズ全体の流れを変えたのは、間違いなく彼の存在だった。


レブロンとのマッチアップで証明した“本物”

この年のレブロン・ジェームズは、絶頂期にあった。2年連続MVP、2年連続ファイナルMVP、そして前年のファイナル勝利も彼の支配力あってこそだった。

そんなレブロンと正面からマッチアップし、真正面からぶつかったのが、当時22歳のカワイ・レナードだった。彼は怯まなかった。むしろ、レブロンを相手に自分の存在価値を証明しようとしていた。

ポストプレーにしっかり身体を入れ、ドライブには素早く反応、ジャンプショットにも手を伸ばす。もちろん、レブロンが得点を重ねる場面もあったが、シリーズを通じて彼に“いつもの支配力”を発揮させなかったのは、間違いなくレナードのディフェンス力のたまものだった。


ダンカン、パーカー、ジノビリの“次”を示した瞬間

このスパーズというチームには、長年リーグの中心を支えた“三本柱”がいた。ティム・ダンカン、トニー・パーカー、マヌ・ジノビリという、勝ち方を知り尽くしたベテランたち。

だが、2014年のファイナルではっきりしたのは、このチームの未来がレナードに託される、という事実だった。第3戦からの3試合、すべてチーム最多得点。しかもチームバスケットの中での得点。ワンマンプレーではない。

それはまさに、スパーズという“システム”の中で育ち、開花した新世代エースの誕生だった。

ダンカンが試合後に語ったコメントが象徴的だ。

「彼は僕たちの未来だ。いや、もう“今”を背負ってる。」


史上3番目の若さでのファイナルMVP

ファイナル終了後、最も輝いた選手に贈られる“ファイナルMVP”が、カワイ・レナードに授与された。チームの“4番手”とも見られていた彼が、堂々と頂点に立った瞬間だった。

この時、レナードは22歳229日。NBA史上3番目の若さでのファイナルMVPとなった。ちなみに、史上1位と2位はどちらもマジック・ジョンソン。19歳と20歳でファイナルMVPに輝いた唯一無二のレジェンドだ。

レナードは、そうした伝説的な名前と並ぶ存在となった。


静かなるエース、沈黙の支配者

カワイ・レナードは、おしゃべりなスターではない。感情をあまり表に出さず、笑うことすら少ないと言われる。だが、彼のプレーは雄弁だ。派手なアリウープなどは少ないが、必要なときに必要なプレーを静かに決める。

その冷静さ、判断力、そして卓越したディフェンスと効率的なオフェンス。2014年のファイナルは、レナードの“NBAスーパースター”としての起点だった。

このあと彼は、トロント・ラプターズで2度目のファイナルMVPに輝き、キャリアを確立するが、原点はやはりこの年のスパーズだった。


終わりに──“遠慮”を捨てた男の覚醒

2014年のNBAファイナルは、シリーズとしても見応えのある内容だったが、カワイ・レナードという新星の覚醒劇としても語り継がれる。

ポポビッチに「もう遠慮するな」と言われたその瞬間から、彼はNBAの主役になった。ティム・ダンカンから“勝者のDNA”を受け継ぎ、レブロン・ジェームズに真っ向勝負を挑み、そして頂点で“無言の支配”をやってのけた。

静かで、地味で、でも誰よりも強い。2014年のファイナルで見せたあの輝きは、今なおNBAファンの記憶に焼きついている。

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