NBAポスターコラム100:得点力なきPGは勝てない時代へ。ストックトン、ナッシュ、ポールの宿命、、、。

NBAポスターコラム

100-スーパーポイントガード

スーパーポイントガードの条件とは?得点力とNBAの進化

得点力がPGに求められるようになった時代背景

かつてポイントガードの役割といえば、ゲームメイクとチームをコントロールすることが第一だった。
アイザイア・トーマスのように得点もできるPGは存在したが、それは「武器の一つ」であって「必須条件」ではなかった。90年代まではセンターとフォワードを軸に、ガードはチームの潤滑油であり、得点は二次的な役割だったといえる。

だが2000年代に入り、リーグのトレンドは徐々に変わる。ハンドチェック禁止やディフェンス3秒ルールの導入で、ガードが自由にプレーできる環境が整った。結果、PGが攻撃の中心になり、得点力を持たなければチームを勝利に導けない時代が到来する。

アレン・アイバーソン、ギルバート・アリーナス、そしてデリック・ローズ。彼らは得点力でリーグを席巻し、「スコアリングPG」という新しいジャンルを確立した。そして、その系譜の最終形として現れたのがステフィン・カリーだった。


カリーが引き起こした革命

2015年以降のカリーのブレイクは、NBAの戦術を根本から変えてしまった。
彼は「NBA史上最高のシューター」と呼ばれるだけでなく、3Pを主軸としたチームオフェンスの中心に自ら立った。

これまでの「PGは味方にパスを供給する」という常識を覆し、「PG自身が最も効率的なオフェンスオプションになれる」ことを証明した。さらに、カリーは得点だけでなく、シュートの存在そのものがディフェンスを歪ませるため、結果的にチーム全体の攻撃効率を引き上げた。

つまり、カリーの出現によって、PGにおける得点力の重要度は一気に跳ね上がり、「得点力のないPGは勝てない」という時代に突入したわけだ。


なぜポール、ナッシュ、ストックトンはリングを取れなかったのか?

ここで興味深いのは、リーグを代表する名PGたち――クリス・ポール、スティーブ・ナッシュ、ジョン・ストックトン――が誰一人として優勝リングを手にできなかったという事実だ。偶然にしては出来すぎている。

1. クリス・ポールの場合

ポールはリーグ屈指のフロアジェネラルであり、得点力も十分にあった。だが彼の全盛期のウェストにはダンカン、コービー、そして後にはカリーといった超大物たちでひしめき合っていた時代。
最大の不運は、2018年のロケッツでウォリアーズを追い詰めた際にハムストリングを負傷したことだろう。健康でさえあれば、少なくとも一度はリングを取れていた可能性が高い。

2. スティーブ・ナッシュの場合

ナッシュは2度のMVPを誇るが、彼が率いたサンズは「セブンセカンズ・オア・レス」という革新的オフェンスを展開しつつ、ディフェンス面ではどうしても穴を抱えていた。
また、ナッシュ自身は得点力よりもゲームメイクに特化していたため、終盤に自らが爆発して勝負を決めるタイプではなかった。これが「決定的な違い」となったともいえる。

3. ジョン・ストックトンの場合

ストックトンはNBA史上最高の司令塔の一人だが、彼のキャリアはマイケル・ジョーダンという絶対的王者と重なってしまった。1997年、1998年と2年連続でファイナルに進出したものの、ブルズに阻まれた。
また、ストックトンはディフェンス面では優秀だったが、爆発的な得点力を持つ選手ではなく、やはり「得点で試合を支配する力」に欠けていた。


優勝時ジェイソン・キッドの立ち位置

一方で、優勝を経験したPGの代表例がジェイソン・キッドだ。
2011年、ダラス・マーベリックスが優勝したときのキッドは、もはや若き日のメインハンドラーではなかった。個人におけるインパクトは薄れていても、ディフェンス、リーダーシップ、ゲームコントロールというオールラウンドな能力を発揮し、まさに「潤滑油」として機能した。

このときマブスの中心はダーク・ノヴィツキーであり、キッドは「チームを勝たせるための補完役」に徹した。
ここにも時代の変化が見える。すでに「PGが得点を背負う」役割は薄れ、チーム全体のバランスを取る存在へとシフトしていたのだ。


スーパーポイントガードの条件の変遷

こうして振り返ると、スーパーポイントガードの条件は時代ごとに変化してきたことがわかる。

  • 80年代以前:チームの司令塔としての安定感、
  • 90年代~00年代前半:ゲームメイク能力、オールラウンド性(ストックトンやキッド型)
  • 00年代後半:得点力が必須条件へ(アイバーソン、ローズ、ポール型)
  • 2010年代以降:シューターとしての脅威(カリー型)、あるいは万能型スコアラー(リラード、ウェストブルック)

この流れを見れば、なぜナッシュやストックトンが優勝できなかったのかも腑に落ちる。彼らがPGとしての「理想像」であった一方で、時代が「得点力」に傾き始めていたからだ。そして、最終的にその流れを決定づけたのがカリーだった。


まとめ

  • PGに得点力が求められるようになったのはルール改正と戦術変化による必然。
  • カリーはその流れを決定づけ、「史上最高のシューター」としてPG像を一変させた。
  • ポール、ナッシュ、ストックトンがリングを得られなかったのは、時代の壁と得点力への要求とのズレが要因の一つ。
  • 優勝したキッドは「得点するPG」ではなく「潤滑油としてのPG」という立ち位置で勝利をつかんだ。

つまり「ポイントガード」とは時代ごとに姿を変える存在だ。カリー以降のNBAでは、PGが得点力を持たなければ頂点に立てないのはほぼ必然。今後も「得点とプレーメイクを両立できるPG」こそが、リーグを支配する条件であり続けるだろう、、、。

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