90-LA・レイカーズ
コービー・ブライアントと“シャック脱却”レイカーズの黄金時代
08年MVP、09年ファイナルMVP――NBAを象徴する存在へ
2008年、コービー・ブライアントはキャリア12年目にして初のレギュラーシーズンMVPを受賞。そして翌09年には、ファイナルMVPを手にしてリーグ最高峰の選手としての地位を不動のものにした。
それは単なる個人賞の積み重ねではなく、“シャキール・オニールがいなくても勝てる”ことを証明した瞬間でもあった。シャックとのコンビで既に3連覇を達成していたが、その後の決別は彼のキャリアに大きな影を落とした。「オニールなしでは勝てない」という声をねじ伏せるため、コービーは得点力だけでなく、しぶといマンツーマンディフェンス、そして強烈なリーダーシップを磨き上げた。
パウ・ガソルの加入――レイカーズを一段引き上げたビッグマン
2008年2月、レイカーズはグリズリーズとのトレードでパウ・ガソルを獲得。この瞬間、チームは一気に優勝候補へと変貌した。
ガソルは213cmの長身に加え、ペイントエリアでの巧みなフットワーク、ソフトタッチのシュート、パス能力を兼ね備えていた。特にコービーとのピック&ロールやハイローの連携は、ディフェンスを撹乱する強力な武器になった。インサイドで安定して得点を稼げる存在は、それまでのレイカーズには欠けていたピースだった。
ガソルは単なる補強ではなく、チームを“1ランク上のレベル”へ押し上げる触媒となったのだ。
ラマー・オドム――万能性が生み出す試合の流れ
ラマー・オドムは、NBAでも珍しい“万能型フォワード”だった。208cmのサイズでありながら、ポイントガードのようなドリブルとパス能力を持ち、リバウンドやゴール下のフィニッシュにも秀でていた。
彼の最大の強みは、先発でも控えでも同じように機能し、試合の流れを変えることができる点だ。コービーとガソルが得点の軸を担う中、オドムは必要に応じて得点、リバウンド、アシストを柔軟に供給する。派手さはないが、彼がベンチから出てきた瞬間、レイカーズの戦術の幅は一気に広がった。
ロン・アーテスト――賛否を呼んだ“セルフィッシュDF”
2010年に加入したロン・アーテスト(後のメッタ・ワールドピース)は、対人守備においてNBA屈指の実力者だった。強靭なフィジカルと執念深いマークで、相手エースを徹底的に封じる。
しかし、その守備スタイルは時に“セルフィッシュDF”と呼ばれた。マッチアップに固執しすぎるあまり、チーム全体のローテーションやヘルプディフェンスを犠牲にする場面があったのだ。それでも、彼の勝負強さや精神面でのタフさは、プレーオフの大舞台で何度も光った。2010年ファイナル第7戦、セルティックスとの死闘で決めたクラッチ3Pは、レイカーズファンの記憶に深く刻まれている。
アンドリュー・バイナム――未完の大器
アンドリュー・バイナムは、レイカーズが将来の大黒柱として期待したセンターだった。216cmのサイズと恵まれたウイングスパン、ポストムーブの柔らかさは、リーグでも屈指のポテンシャルを秘めていた。
しかし、怪我が多く出場試合数は伸びず、精神的な未熟さも指摘された。2011年プレーオフ、レイカーズはカンファレンス準決勝でダラス・マーベリックスにまさかの4連敗スイープを喫した。
シリーズ最終戦、フラストレーションを募らせたバイナムは、小柄なホセ・バレアに対し、空中での露骨な肘打ちを浴びせ退場。全盛期を迎えるはずの時期に離脱を繰り返し、結局“才能を完全に開花させた”とは言えなかった。
デレク・フィッシャー――真のハート&ソウル
この黄金期レイカーズを盤石なものにしていた影の功労者が、デレク・フィッシャーだ。
フィッシャーは派手なスタッツを残すタイプではなかったが、勝負所での冷静な判断力とクラッチシュート能力は折り紙付き。コービーが表向きのリーダーであるなら、フィッシャーは“ハート&ソウル”としてチームを支えた存在だった。
試合中は常に声を張り上げ、若手には冷静さを、ベテランには闘志を注入する。2009年ファイナル第4戦の延長で放った同点3Pや、2010年ファイナル第3戦での連続ビッグプレーは、まさに勝負師の面目躍如だった。フィッシャーがいたからこそ、レイカーズは精神的に崩れることなく、連覇という偉業を成し遂げられた。
コービーのリーダーシップ――黄金時代を作った原動力
この時代のレイカーズを語る上で欠かせないのが、コービーのリーダーシップだ。練習の鬼として知られ、若手や新加入選手に対しても容赦なく要求を突きつけた。時に衝突を生むこともあったが、その厳しさがチーム全体のレベルを引き上げた。
“シャック脱却”後、彼が作り上げたのは、個の力に依存するチームではなく、各ポジションの選手が役割を全うする“完成された組織”だった。
総括――個性の融合と崩壊のドラマ
2008年から2010年にかけてのレイカーズは、コービーの得点力とリーダーシップ、ガソルの安定感、オドムの万能性、アーテストの守備力、バイナムのポテンシャル、そしてフィッシャーの精神的支柱としての存在が絶妙に融合したチームだった。
しかし、NBAは常に進化を続けるリーグであり、戦術やロスターの変化、怪我や精神的な問題が、その黄金期を長くは続けさせなかった。
それでも、この時代のレイカーズは“シャック後”のコービーを象徴し、彼が真の勝者であることを証明した時代として、今なお語り継がれている。
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