777-アレン・アイバーソン
文句なしの”The Answer” 史上最小のMVP、その偉業と衝撃
史上最小のMVP、アレン・アイバーソン
2000-01シーズン、NBAはまさにアレン・アイバーソンのシーズンだった。183cmという小柄な体でありながら、圧倒的なスコアリング能力と勝負強さでリーグを席巻し、MVPを受賞。投票では2位のティム・ダンカンに415ポイント差をつけ、124人中93人が1位票を投じるという圧倒的な支持を得た。
フィラデルフィア・76ersの選手としては、1982-83シーズンのモーゼス・マローン以来、18年ぶりのMVP受賞。何よりも驚異的だったのは、彼がジョーダン以来の”得点王&スティール王”の二冠を達成しながら、単なるスコアラーにとどまらず、勝利へとチームを導くリーダーへと進化したことだった。彼の成長を見届けたラリー・ブラウンも「彼はベストプレーヤーというだけでなく、最高のチームメイトにもなった」と評している。
ケガを抱えながらも戦い抜いた”タフネス”
アイバーソンのプレースタイルは、常にフィジカルなコンタクトを伴うものだった。ドライブを仕掛け、相手のビッグマンにぶつかりながら得点を決める。フロアに叩きつけられることは日常茶飯事であり、シーズンを通じて満身創痍だった。
プレーオフに入っても彼のタフネスは際立っていた。カンファレンス・ファイナルでは尾てい骨に痛みを抱え、さらに試合中に歯を折られ口の中が血だらけになっても、決してプレーをやめることはなかった。NBAファイナル第5戦では、脇腹を強打し骨折の疑いがあるほどのダメージを負いながらも、コートに立ち続けた。
こうした姿勢に、多くのファンが心を動かされた。当初は彼の見た目やヒップホップカルチャーを嫌う大人たちも、次第にアイバーソンのプレーに敬意を抱くようになっていった。特に地元フィラデルフィアの人々は、彼の傷を自らの傷のように感じ、痛みや苦しみを共有し、共に歓喜した。「タフ」という言葉は、この小さなリーダーが体現したシクサーズの精神そのものだった。
コート上の戦士、変わらぬ”らしさ”
ただし、アイバーソンのすべてが変わったわけではない。試合になれば、彼は相変わらず感情をむき出しにし、フロアで怒り、叫び、殺気を放ちながらプレーを続けた。
ファイナルでは、ファウルをなかなか取らないレフェリーに執拗に抗議し、コービー・ブライアントと激しく罵り合う場面もあった。特に有名なのは、第1戦でティロン・ルーに決めたステップバック・ジャンパーの後、倒れたルーを跨いだシーンだ。まさに”アイバーソンらしさ”が詰まった瞬間だった。
ヒップホップカルチャーをNBAに持ち込んだ革命児
アイバーソンの影響力は、プレーだけにとどまらなかった。彼が持ち込んだヒップホップカルチャーは、NBA全体に浸透し、リーグがドレスコードを制定するほどの変革をもたらした。
コーンロウ(細かい三つ編み)、バギーパンツ、ダイヤモンドのアクセサリー。従来のNBAにはなかったスタイルを貫き、ストリートのリアルを持ち込んだ。その結果、彼の影響を受けた若い世代の選手たちは、次第に自身のスタイルを表現するようになった。カーメロ・アンソニー、レブロン・ジェームズ、デリック・ローズなど、多くのスター選手が彼の影響を受けている。
シクサーズの関連商品売上リーグNo.1
アイバーソン効果は、マーケットにも大きな影響を与えた。2000-01シーズン、シクサーズの関連商品の売上はNBA全体の30.3%を占め、レイカーズやニックスといった大都市のチームを抑えてリーグ1位を記録。さらに、個人のユニフォーム売上ランキングでも”No.3″のジャージが堂々の1位となった。
プロとしての成長「それでも、俺は俺のまま」
2001年6月8日、NBAファイナル第1戦の翌日、アイバーソンは26歳の誕生日を迎えた。試合後のインタビューでは「人生で初めて、コートの中でも外でも自分自身をプロフェッショナルとしてコントロールできているんだ」と語った。
プロ入りした20歳の頃はまだ未熟だったが、苦難を乗り越えながら成長を遂げたアイバーソンは、今やNBAのトッププレーヤーとなった。しかし、彼はこうも語っている。「それでも、俺は俺のままだ。ただ歳を重ねただけのこと。もっと賢くなったんだよ。これからも過ちを犯すだろうが、そこから学び、一人の人間として、バスケットボールプレーヤーとして、より成長しようとするつもりだ」
この言葉こそ、アイバーソンという男を象徴している。自身のスタイルを貫きながらも、成長を続ける姿。史上最小のMVPは、単なるスーパースターではなく、NBAの歴史を変えた存在だった。
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