140-レブロン・ジェームズ
レブロン・ジェームズ3年目の進化 ― 王者の胎動
高校生からNBAの主役へ
2003年にドラフト全体1位でクリーブランド・キャバリアーズに入団したレブロン・ジェームズ。入団当初から「キング」の愛称で注目されていたが、3年目を迎えた2005-06シーズンに、その片鱗ではなく本物の「支配者」へと進化を遂げた。
2年目には平均27.2得点を記録してリーグを代表するスコアラーへと成長していたが、3年目にはさらに一段ギアを上げ、平均31.4得点に到達。21歳の若者が、NBAの頂点を争うスコアリングリーダーの仲間入りを果たしたのだ。
プレーメイクの覚醒 ― 見える景色の変化
『スポーツ・イラストレイテッド』のインタビューでレブロンはこう語っている。
「アイソレーションでボールを持ったとき、目の前のディフェンダーはもう眼中にない。誰がヘルプに来るのか、それを見ているんだ」
つまり、単純な1on1勝負の段階を超え、相手ディフェンス全体を把握してプレーできる域に達していた。ヘルプが寄ればパス、寄らなければパワフルなドライブ。相手にとっては解決法がほとんどない二択を迫られる状況を作り出していた。
NBAの多くのスーパースターが数年かけて磨き上げるコートビジョンを、レブロンは3年目にして手に入れていたのである。
オールスターMVP ― 最年少の栄冠
進化の証はスターが集う舞台でも表れた。2度目の出場となったオールスターで29得点6リバウンドを記録し、史上最年少でMVPを獲得。スター軍団の中で輝きを放ち、「若手のホープ」から「中心人物」への階段を一気に駆け上がった瞬間だった。
この時レブロンはまだ21歳。世間的には大学3年生の年齢で、同世代が学生として過ごしている時期に、すでにNBAの頂点を狙う存在へと変貌していた。
孤軍奮闘とチームの躍進
シーズンのキャブスは13年ぶりに50勝をマーク。新加入のラリー・ヒューズが故障で長期離脱したこともあり、レブロンが孤軍奮闘する場面も多かった。しかし、ドリュー・グッデンやデイモン・ジョーンズらが脇を固め、シーズン中盤にはロナルド・マレーを補強して終盤に勢いをつけた。
レブロンはチームの大黒柱として完全に君臨し、初めてオールNBAファーストチームに選出。MVP投票ではスティーブ・ナッシュに次ぐ2位となり、個人の評価も一気に跳ね上がった。
初めてのプレーオフ ― 鮮烈なデビュー
キャリア初のプレーオフの舞台でも、レブロンはその才能を惜しみなく発揮した。ワシントン・ウィザーズとの初戦、デビュー戦にして32得点、11リバウンド、11アシストのトリプルダブル。これは1980年のマジック・ジョンソン以来となる快挙だった。
プレーオフはディフェンスが格段に激しくなる。だが、レブロンはシーズン同様に1試合平均30.8得点を維持し、タフな舞台でもスコアラーとして揺るぎない存在感を示した。カンファレンス準決勝では王者ピストンズを第7戦まで追い詰め、「未来の王」が本物であることを証明した。
オールラウンドプレイヤーとしての姿
3年目の時点ですでに「得点」「リバウンド」「アシスト」をすべて高い次元でこなせるオールラウンドプレイヤーだった。
1on1で止めるのは不可能に近く、フィジカルとスピードを融合させたドライブは相手を粉砕。ポストアップからのフェイドアウェイも磨かれつつあり、守る側にとっては悪夢そのものだった。
さらにキャリアを重ねるにつれて3Pシュートも確率を上げ、攻撃の幅を広げていった。まさに「万能」という言葉がぴったりのプレイヤー像を形成していく。
歴史の転換点となった3年目
このシーズンは、単なる「有望株」から「リーグを代表するスター」への決定的なターニングポイントだった。高校を卒業して3年目で平均30点超え、プレーオフでのトリプルダブル、オールスターMVP、MVP投票2位、そしてチームを50勝へ導く。どれを取っても常軌を逸している。
以降のレブロンはキャリアを通じて「勝者の定義」を塗り替え続ける存在となるが、その礎は間違いなく3年目のシーズンに築かれた。
まとめ
- 平均31.4得点で一気に得点王争いに加わった。
- コートビジョンの覚醒により、相手ディフェンスを俯瞰してプレーできるようになった。
- オールスターMVP最年少受賞でスター性を証明。
- キャブスを13年ぶりの50勝へ導き、MVP投票2位に。
- プレーオフ初戦でトリプルダブルという歴史的デビューを飾った。
3年目のレブロンは、身体能力だけではなくバスケットボールIQと勝者のメンタリティを兼ね備えた「超一流」へと進化を遂げていた。
NBA史に名を刻むレジェンドの物語は、ここから本格的に始まったのだ。
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