132-NBAファイナル2006
2006年NBAファイナル――ウェイドが創設18年目のヒートを王者に導いた瞬間
シリーズ序盤:マブスの圧倒的な勢い
2006年のファイナルは、ダラス・マーベリックスとマイアミ・ヒートの対戦だった。マブスはダーク・ノビツキーを中心に、ディフェンスとオフェンスのバランスが整ったチーム。レギュラーシーズン60勝22敗で西の首位を獲得し、プレーオフでも安定して勝ち進んだ。
一方のヒートは、シャキール・オニールと若きドウェイン・ウェイドを軸に東を制覇。だがシーズンを通じて怪我やロスターの噛み合わせに苦しみ、盤石という評価ではなかった。
ファイナル初戦、ホームのダラスは勢いそのままにヒートを圧倒。ノビツキーがインサイド外から自在に得点を奪い、2戦目もマブスが制して2勝0敗。シリーズの流れは完全にマブスに傾いた。ほとんどの人が「マブスが初優勝へ」と確信していたはずだ。
マイアミに戻ってきた第3戦――流れを変えたウェイド
しかし、ここからが伝説の始まりだった。マイアミでの第3戦、ヒートは後半までリードされていた。第4クォーター残り6分、13点差。ほぼ試合を決めるような場面だった。だが、ウェイドはそこから怒涛の連続得点を重ねる。
強靭な体幹から繰り出すドライブは、マブスの守備を次々と切り裂いた。ファウルをもらいながらゴールへ突っ込み、フリースローで確実に加点。最後はクラッチショットまで沈めて、チームを劇的な逆転勝利へ導いた。
この1勝が、シリーズの流れを完全にひっくり返した。
歴史的なパフォーマンス――平均34.7得点
第3戦以降のウェイドは、もはや人間離れしていた。とにかくリングにアタックし続け、フリースローを量産。シリーズ全体で97本のフリースローを決め、これはファイナルの歴史でも記録的な数字だった。
さらに、1試合平均34.7得点というスタッツを残した。ファイナル初出場の選手としては史上最高の得点記録であり、マイケル・ジョーダンやシャックと並ぶ支配力を見せつけた。
マブスのディフェンスは後半になるとほぼウェイドへのファウルで止めるしかなく、戦術的にも追い込まれていった。ノビツキーはエースとして奮闘したが、周囲のシュートが決まらず失速。ヒートは第4戦、第5戦と接戦をものにし、一気にシリーズをひっくり返した。
シャックとベテラン勢の存在
もちろん、ウェイドひとりの力ではなかった。シャックは往年の支配力こそ失われていたが、リム付近での存在感とリバウンドでマブスのインサイドに圧力をかけた。
さらに、アロンゾ・モーニングの守備や、ゲイリー・ペイトンのクラッチショット、アントワン・ウォーカーのアウトサイドシュートなど、ベテラン勢も随所で貢献。ヘッドコーチのパット・ライリーは「老獪さ」を最大限に活かし、経験値の差でマブスをじわじわと追い詰めた。
特に第6戦ではモーニングがリム周辺を死守し、相手のドライブを次々とブロック。ウェイドの得点力とベテランの支えが噛み合い、ヒートはついに王手をかけた。
第6戦――歓喜の初優勝
迎えた第6戦、ダラスのホームで行われた。試合は互角の展開だったが、ここでもウェイドが大爆発。36得点をあげ、試合を決定づけた。
試合終了のブザーが鳴った瞬間、マイアミ・ヒートは創設18年目で初の優勝を果たした。シリーズ4連勝、2勝0敗からの逆転劇というドラマティックな結末だった。
ファイナルMVPに輝いたのはもちろんウェイド。平均34.7得点、7.8リバウンド、3.8アシスト、2.7スティールという圧倒的な数字を残し、「フラッシュ」の名を世界に刻み込んだ瞬間だった。
歴史的意義――新世代の到来
このファイナルは、NBAの歴史に大きな意味を持っている。シャック時代の延長線上にありながら、主役は完全にウェイドへと移った。つまり「90年代型のセンター支配」から「ウイングエースによる得点支配」への象徴的な転換点でもあった。
マブスにとっては悔しい敗北だった。ノビツキーは後に2011年に雪辱を果たすことになるが、この2006年の屈辱は大きな原動力になったのは間違いない。
一方のウェイドは、この優勝で一気にスター街道を駆け上がった。のちにレブロン・ジェームズやクリス・ボッシュを迎えて「ビッグ3時代」を築くが、その基盤はこの2006年のファイナルでの英雄的な活躍にあったといえる。
まとめ
2006年ファイナルは「ウェイドが一人で流れを変えた」シリーズとして語り継がれている。2勝0敗からの大逆転。平均34.7得点の衝撃。フリースローを量産し、ドライブで切り裂き続けた姿は、まさに若き日のスーパーヒーローそのものだった。
ヒートは創設18年目で初の栄冠を手にし、NBAの歴史に新しい1ページを刻んだ。あの時のウェイドの姿は、今なおファンの記憶に鮮烈に残り続けている。
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