65-オールスター2008
NBAに吹き荒れた若き才能の嵐──2007-08シーズン、世代交代の鼓動
2007-08シーズンのNBAは、確実にひとつの時代の終わりと、次の時代の始まりを告げていた。シャック、ダンカンらが築いてきた2000年代前半の王朝に対して、明確に“ヤングジェネレーション”が牙を剥き始めたのがこの年だった。
レブロン・ジェームズが支配者への道を駆け上がる
前年の06-07シーズン、レブロン・ジェームズはキャバリアーズをファイナルに導くという離れ業を演じ、すでに「NBAの顔」としての存在感は十分だった。だが、2007-08はそれを上回る“支配”のシーズンだった。
この年、レブロンは平均30.0得点を記録して初の得点王を獲得。しかもキャリア5年目にして通算1万得点に到達し、その到達スピードは当時の最年少記録を更新。かつてのアイドル、コービー・ブライアントをも超えるペースだった。
さらに、オールスターではMVPを受賞。華やかな舞台で、プレースタイルも実績も共に“キング”としての威厳を示した。ディフェンスの圧力をものともせず、フィジカルでねじ伏せ、なおかつ巧みに味方を活かすその万能性はすでに完成されていた。
オールNBA1stチームにも選出され、もう“若手”という表現がそぐわないほどに、レブロンはこの年にしてリーグの頂点に近づいていた。
ドワイト・ハワード、史上最年少リバウンド王の誕生
インサイドでは、また別のヤングスターが台頭していた。4年目のドワイト・ハワード。オーランド・マジックの希望として成長を続けていたハワードは、ついにこのシーズン、平均14.2リバウンドでリバウンド王に輝いた。
この数字はあのシャックですら成し遂げていない快挙であり、史上最年少リバウンド王としてNBA史にその名を刻む。まだローポストでのムーブやシュートには課題が残っていたが、驚異的な身体能力と跳躍力でそれを補って余りあるインパクトを放っていた。
特に守備における影響力はすさまじく、ブロックショットやローテーションの速さ、リムプロテクト能力は、すでにリーグ屈指。翌シーズン以降、ディフェンシブ・プレイヤー・オブ・ザ・イヤーを3年連続で獲得することになるが、その片鱗はこの07-08年からはっきりと見えていた。
クリス・ポールが司令塔の頂点へ
ガード陣でも革命が起きていた。ニューオーリンズ・ホーネッツのクリス・ポールが、ついに“リーグNo.1 PG”の座に名乗りを上げる。
この年のポールは、平均11.6アシスト、2.7スティールというスタッツで、アシスト王とスティール王の二冠を達成。加えて平均21.1得点という自己最多記録もマークし、得点面でも脅威となった。
得意のピック&ロール、特にデビッド・ウェストとのコンビネーションは絶妙で、オフェンスを完璧にコントロールしながら、必要とあらば自身で得点も取りにいく。試合終盤のクラッチタイムにも強く、ゲームメイクと勝負強さが共存した理想のフロアリーダーだった。
彼もまた、オールNBA1stチームに名を連ねることになり、いよいよ時代がナッシュやキッドからポールに移り始めているのを多くのファンが実感した。
オールスターにあふれる新世代の顔ぶれ
この年のNBAオールスター(ニューオーリンズ開催)は、それ自体が象徴的だった。出場選手の中に、03年以降にデビューしたヤングスターが多数を占めていたからだ。
以下の選手たちが選出されている:
- レブロン・ジェームズ(03年組)
- ドゥエイン・ウェイド(03年組)
- カーメロ・アンソニー(03年組)
- クリス・ボッシュ(03年組)
- ドワイト・ハワード(04年組)
- クリス・ポール(05年組)
- ブランドン・ロイ(06年組)
- デビッド・ウェスト(03年組)
もはや“次世代”ではなく、“今”の主役たちが名を連ねた豪華な布陣だった。
レブロンとウェイドの連携、カーメロのスムーズな得点力、ロイのバランス感覚にポールのゲーム支配…。彼らはすでにリーグの中心にいて、ベテランたちに迫るどころか、凌駕しようとしていた。
歴史的転換点としての07-08シーズン
この07-08年を境に、NBAは明確に“若い力”に支配されていく。
コービー・ブライアントが悲願のMVPを獲得し、ベテランの意地を見せた年でもあるが、同時に若手の波が止めようもなく押し寄せたシーズンだった。レブロンやポールがオールNBA1stに名を連ね、ハワードがリバウンド王、ルーキーにはケビン・デュラントがいた。
翌年以降、彼らはタイトル争いの中心人物となり、NBAの勢力図は大きく塗り替えられていく。
この07-08シーズンは、言ってしまえば**“未来の主役たち”が表舞台に躍り出た年**であり、その勢いが止まることはなかった。
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