28-トニー・パーカー
フランスからやってきたスピードスター
トニー・パーカーという存在
NBAの歴史を語るうえで、トニー・パーカーは欠かせない存在。サンアントニオ・スパーズの黄金期を支えたPGであり、ヨーロッパ出身の選手としては異例の成功を収めた男だ。彼の最大の武器は、何と言っても圧倒的なスピード。トップギアに入った瞬間、ディフェンダーはついていけない。
ティアドロップ:誰にも止められないシグネチャームーブ
ティアドロップは、パーカーの代名詞とも言える得点パターン。ゴール下にビッグマンが構えていようが関係ない。スピードでギャップを突き、そのままフローティング気味にボールを放つ。軌道は高く、タイミングは早く、タッチは繊細。これが止められない。
面白いのは、ティアドロップを使うタイミング。ゴール下の密集地帯でも強引にレイアップにいかず、ほんの一瞬のスペースを感じたら即座にこのショットを放つ。パーカーのティアドロップは、フィニッシュ手段であると同時に、ディフェンダーの心理を逆手に取った技術でもある。
スピンムーブの職人芸
パーカーを語る上で欠かせないのが、ペネトレイトからのスピンムーブ。特に速攻時のスピンムーブは美しい。スピードに乗ったまま体をひねり、ディフェンダーを振り払うあの動きは、何度見ても鮮やかだった。
ただし、技術的にはグレーな場面も少なくない。スピンした際に軸足がずれていたり、ギャザーのタイミングが怪しかったり…という声も当時からあった。とはいえ、それだけ彼のスピンムーブがキレていたという証拠でもある。
パスセンス:得点だけじゃない、ゲームメイクの力
パーカーは得点力ばかりが注目されがちだけど、実はアシスト能力も高い。ピック&ロールからの判断が速く、ショートロールへのパス、コーナーへのキックアウト、ビッグマンへのアリウープ…そのすべてに「間」がある。
特にティム・ダンカンとのコンビは絶品だった。ダンカンがスクリーンをかけてロールすると、パーカーはわずかなディフェンスのズレを見逃さずにパスを通す。その絶妙なタイミングには、視野の広さと読みの鋭さが光っていた。
外角シュート:弱点を克服していった成長
キャリア初期のパーカーは、外角シュートがやや不安定だった。3P成功率は20%台の年もあり、「パス&ドライブ型PG」としての印象が強かった。だがキャリア中盤以降、確実にジャンパーの精度を向上させていく。
ミッドレンジのPull-Upジャンパーは、ディフェンダーをかわした直後に打つことが多く、スピードとのコンビネーションで効果的。3Pも本数こそ多くはないが、開いた場面ではしっかり沈める。必要な場面で必要なシュートを決める、“勝負どころで信頼できる”PGに進化していった。
スパーズの哲学と完全にマッチしたPG
そして最後に触れておきたいのが、トニー・パーカーとスパーズの関係性。グレッグ・ポポヴィッチHCの下で、システムの中に自らを溶け込ませつつ、個人としての輝きも放っていた。自己主張が強いわけではないが、必要な場面ではしっかり決める。ティム・ダンカン、マヌ・ジノビリとの「ビッグ3」は、NBA史上でも屈指のケミストリーを誇った。
パーカーがいたからこそ、スパーズはあれだけ安定したチームになれた。ダンカンの堅実さ、ジノビリの創造性、そしてパーカーのスピードとフィニッシュ力。この3つが見事に融合した結果、4度のNBAチャンピオンに輝いたわけだ。
スピードだけじゃない、技巧と知性で魅せたPG
トニー・パーカーは、ただのスピードスターではない。速さにテクニックを乗せて、状況判断と駆け引きで勝負する、極めて完成度の高いポイントガードだった。ペネトレイトからの多彩なフィニッシュ、なかでもティアドロップ。どのプレーにも意思と緻密さがある。
もし彼のプレーをリアルタイムで見たことがないなら、ぜひハイライトを漁ってみてほしい。軸足が動きまくってるスピンムーブも含めて、それもまた「味」だ。
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