「人生で最良の日だ」。紆余曲折を経て、頂点を極めたレブロンは試合後、そう語った。

戦前の予想としては、『サンダー有利』の声が圧倒的に多かったNBAファイナル2012。

理由はサンダーの攻撃力(平均103.1点/リーグ3位)がヒート(平均98.5点/同7位)を凌駕すると見られているからだ。

また、サンダーにはホームアドバンテージがあり(ホームで最大4試合戦える)、さらにカンファレンスファイナルからの休養時間もヒートより長い。

何よりも「攻撃力」「休養期間」の他に「恐れ知らず」だったことがサンダーの快進撃を後押ししてきたことだ。

この時、デュラントとウェストブルックが23歳、ハーデンも22歳と、チームを牽引する3人全員がプロ経験5年以内の『若さ』があった。

「僕らは敗戦からも光を見出し、いつかこういう時を迎えるのだと信じてきたんだ」。

強豪を退けファイナル進出決定直後に、ウェストブルックは胸を張ってこう述べた。

このような状況から、世間の下馬評ではサンダーが有利と言われていた。

しかし、恐れを知り、敗戦から学んだのはヒートの方だった。

前年に「スリーキングス」を結成し、ファイナルまで到達したが、マブスに敗れた。

スリーキングスに対する批判を、優勝という形で世間に見返したかった彼らは、そういった気持ちこそがチャンピオンリング獲得に届かなかった理由だと理解していた。

その怖さと学びこそが、このシリーズでのヒートの支えになったようだ。

特にレブロンは、過去3度もファイナルに進出しながら一度も優勝リングを獲得しておらず、かつて「選ばれし者」と呼ばれた男は「ナルシスト」と揶揄されるようになった。

昨年のファイナルでの大失速で、メディアはさらにレブロンを批判した。

しかし、レブロンはレギュラーシーズン、プレイオフでも安定したプレイを披露。

ボストン・セルティックスとファイナル進出を賭けたカンファレンスファイナル第6戦では、45得点と大爆発するなど、「大舞台に弱い」という汚名を少しずつ返上しつつあった。

その結果、ファイナルではマイアミ・ヒートが4勝1敗でオクラホマシティ・サンダーを破り、6年ぶりの優勝を達成。

レブロンはプロ9年目にして、ようやく初めてNBAの頂点に立った。

ファイナルの5試合で、平均28.6点・10.2リバウンド・7.4アシストと、突出した成績をマーク。

さらに大詰めとなった最終戦でも、ファイナル史上6度目となるトリプルダブル(26点・13アシスト・11リバウント)を記録し、文句なしのファイナルMVPに選ばれた。

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