118-コービー・ブライアント
重力に逆らいし、コービー・ブライアント
サンズ戦ラジャ・ベルを抜き去った後に叩き込んだリバースダンク――。この一瞬は、コービー・ブライアントという選手を語る上で象徴的なプレイだ。単なる得点シーンではなく、彼の身体能力、バスケットボールへの探究心、そして「空中で自在に動ける」という唯一無二の資質を凝縮した瞬間だった。
コービーの身体能力とアスリート性
コービーはリーグでも屈指のアスリートだった。決してシャキール・オニールのように規格外のパワーを持っていたわけではないし、マイケル・ジョーダンのように完璧な肉体バランスを持っていたわけでもない。それでも彼は「何でもできる」タイプの身体を持っていた。
爆発的なジャンプ力、驚異的な柔軟性、そして空中での体幹コントロール。この3つを高次元で兼ね備えていたからこそ、ダンクのバリエーションも多彩で、空中でボールを抱えたまま時間を操るようにプレイすることができた。
サンズ戦で見せたリバースダンク
2000年代半ばのサンズは、マイク・ダントーニが指揮し、「7 Seconds or Less」と呼ばれる高速オフェンスでリーグを席巻していた。そのディフェンスの要のひとりが、ラジャ・ベル。フィジカルもメンタルも強く、コービーを最も苦しめたディフェンダーの一人だ。
そのベルを抜き去り、リング裏に回り込んで叩き込んだリバースダンクは、観客の度肝を抜いた。スピード、パワー、そして空中での冷静な判断力――すべてが合わさったプレイだった。あれは「俺は誰にも止められない」というコービーのメッセージでもあった。
ダンクの多彩さと空中戦
コービーのダンクは単なる「豪快」では終わらなかった。ワンハンド、ツーハンド、リバース、ウィンドミル、さらには試合中でも360°を狙おうとするなど、とにかくレパートリーが豊富だった。
そして重要なのは「状況に応じて最適なダンクを選べる」点。例えばゴール下でビッグマンが寄ってきたら、体をねじってリバースに切り替える。ディフェンダーの手が伸びてきたら、あえてリングの裏を通してかわす。コービーにとってダンクは芸術であり、同時に戦術だった。
空中での自在なムーブ
空中でのムーブといえば、コービーの真骨頂はレイアップにも表れていた。ジャンプ中に何度も体勢を変え、ブロックをかわしながらシュートを決める。ジョーダン直系とも言えるが、そのバリエーションと大胆さはコービー独自の進化だった。
「空中で時間が止まる」と言われたのはジョーダンだが、コービーも同じく、観客から見れば1秒が5秒に感じられるほどの余裕を持っていた。そこからフェイダウェイやリバースレイアップを選択できるのは、並外れた体幹と空中感覚のおかげだ。
ダンクから得点王への道
ダンクを武器にしていた若きコービーは、やがてリーグの得点王へと進化する。ジャンパー、フェイダウェイ、3ポイント、フリースロー――どこからでも点を取れる万能型スコアラーになったが、ベースにあったのは「空中を制する感覚」だ。
2005-06シーズンの81得点ゲームでも、豪快なダンクこそ少なかったが、リムにアタックするたびに「空中で何を選ぶか」の余裕があった。その感覚があるからこそ、試合を支配するリズムを作り出せた。
リバースダンクの象徴性
コービーのキャリアを振り返ると、数えきれないほどのハイライトがある。その中でもリバースダンクは特別な位置を占めている。相手のブロックをかわす手段であり、観客を沸かせるエンターテイメントであり、そして「まだ俺は進化している」という自己証明だった。
2011年のオールスターでは、37得点を挙げてMVPを獲得したが、その試合でもリバース気味のダンクを見せた。30代半ばに差し掛かってもなお、若手に負けないアスリート性を示すプレイだった。
重力に逆らうということ
「重力に逆らう」とは、単に高く跳ぶという意味ではない。空中に滞在し、重力を無視するかのように選択肢を広げること。それがコービーの特権だった。
彼のジャンプはただの垂直跳びではなく、滞空時間と体勢のコントロールを武器にしていた。だからこそ彼は「ジャンプシュート職人」でもあり、「空中戦の支配者」でもあった。
終わりに
コービー・ブライアントのリバースダンクは、NBA史に残るハイライトであり、彼のキャリアの象徴だ。サンズ戦でラジャ・ベルを抜き去ったシーンは、彼が持っていた身体能力とバスケIQ、そして「負けん気の強さ」を一瞬に凝縮したものだった。
重力に逆らい、空中を自在に操る――。コービーのプレイは常に「人間の限界」を超えていた。そしてそれこそが、彼が今も語り継がれる理由なんだ、、、。
・「NBA仮説ラボ|NBAの「もし」を考察する実験室」がコチラ↓

・NBAポスター絵画展がコチラ↓
・その他の投稿がコチラ↓
