NBAポスターコラム89:勝利だけで結ばれた3人が作り上げた“無敵のブルズ”とは・・・。

NBAポスターコラム

89-MJ&ピッペン&ロドマン

「勝利」だけで繋がった3人の関係性

90年代中盤、シカゴ・ブルズは「史上最高の選手」マイケル・ジョーダン、「最強のナンバー2」スコッティ・ピッペン、そしてリーグ屈指のリバウンダー、デニス・ロドマンという3人を軸に、史上最強のチーム像を作り上げた。
彼らの共通項は、仲良しでも、互いの私生活を共有する間柄でもない。「勝利」という目的のためだけに結びついた、極めてプロフェッショナルな関係だった。

ジョーダンとピッペンはすでに2度の3連覇を成し遂げた経験を持ち、NBAの頂点を知るデュオだった。そこにロドマンが加わるのは、“劇薬”ではあるが、他のどんなチームよりも“爆発的”な化学反応を生むことを期待された。


最強デュオ+唯一無二のリバウンダー

ロドマンがブルズに加入したのは1995-96シーズン。前年のブルズはジョーダンの復帰後もパワーフォワードの穴が埋まらず、インサイドでの守備・リバウンドに課題を抱えていた。
そこで白羽の矢が立ったのが、当時スパーズを退団したロドマン。リーグ随一のリバウンド力、ディフェンス力、そして精神的な挑発スキルを併せ持つ、唯一無二の存在だ。

もちろん、ロドマンにはトラブルメーカーのイメージもあった。派手な髪色、突飛な行動、試合中の小競り合い…。だがフィル・ジャクソンHCとジョーダンは、それすらも勝利のためなら許容できると判断した。因縁あるピッペンも同意し、この3人のトライアングルは成立した。


歴史を変えた70勝越えシーズン

ロドマン加入初年度、ブルズは歴史を塗り替えるシーズンを送る。
1995-96シーズン、彼らは72勝10敗という当時のNBAレギュラーシーズン最高成績を達成。勝率は驚異の.878(87.8%)で、さらにプレーオフでは15勝3敗。合計すると**87勝13敗(勝率87%)**というNBA史上未踏の領域に到達した。

この数字が異常なのは、ただ勝っただけではなく、試合内容の安定感にあった。ジョーダンが平均30.4得点で得点王を獲得し、ピッペンは万能型フォワードとして攻守両面で存在感を示し、ロドマンは平均14.9リバウンドでリバウンド王に輝いた。
3人はそれぞれ明確な役割を果たし、互いの領域を侵さず、しかし完璧に補完し合っていた。


「勝つためだけ」の冷たい美学

興味深いのは、この3人の関係性が必ずしも温かい友情で成り立っていたわけではないこと。
ジョーダンはロッカールームで必要最低限しか話さないタイプで、ピッペンとも試合外でベッタリ過ごすことはほぼなかった。ロドマンに至っては、練習を無断で休んでプロレス観戦やラスベガス旅行に出かけることすらあった。

だが、それらの行動は「試合で結果を出す」という一点で許容された。
コートに立てば、ロドマンは誰よりも泥臭くリバウンドに飛び込み、ジョーダンとピッペンはその努力を信頼した。そこにあったのは、勝利のために互いを利用し合う、徹底したプロの美学だった。


プレイスタイルの噛み合い

  • ジョーダン:爆発的な得点力、ゲームを支配するメンタル、終盤での決定力。
  • ピッペン:リーグ屈指のディフェンス力、ボールハンドリング、オールラウンドなプレーメイク。
  • ロドマン:リバウンドへの執念、相手エースの精神を削る守備、スクリーンやルーズボール争いなどのハードワーク。

この3者の組み合わせに、フィル・ジャクソンのトライアングル・オフェンスは完成形だった。ジョーダンとピッペンが外も中も攻められ、ロドマンがその全てをリバウンドで回収。失敗してもセカンドチャンスが生まれ、相手は息をつく間もなかった。


後期3連覇の土台

1995-96シーズンの成功は、そのまま後期3連覇(1996〜1998年)へと繋がる。
72勝シーズンで掴んだ勝利の方程式をベースに、翌年は69勝、さらに1997-98シーズンも62勝で制覇。3人が揃っている限り、ブルズは王者であり続けた。

特にファイナルでのロドマンの仕事ぶりは圧巻だった。
1996年ファイナル(vs. シアトル・スーパーソニックス)では、ショーン・ケンプ相手にリバウンドで圧倒。1998年ファイナル(vs. ユタ・ジャズ)では、カール・マローンを身体で削り続け、攻撃リズムを崩した。
スタッツ以上に「勝つために相手のエースを壊す」役割を完遂していた。


時代とともに変わった関係

栄光の後、時代が進むにつれて3人の関係は変わっていく。
ジョーダンは2度目の引退を経てウィザーズへ。ピッペンはロケッツやブレイザーズを渡り歩き、最終的にブルズへ戻って引退。ロドマンはレイカーズやマブスなど複数チームを転々とした。

引退後のインタビューでは、互いにリスペクトを示しながらも、当時の距離感をそのまま語る場面が多い。「仲良しだったわけじゃない。でも、あの時は互いを必要としていた」という言葉は、このトリオを象徴している。


“友情”よりも“結果”を選んだトリオ

NBAの歴史には、友情で繋がった名コンビや兄弟のような関係のチームメイトは多い。
だが、ジョーダン、ピッペン、ロドマンは違った。彼らは友情よりも結果を選び、「勝つために集まったプロ集団」として、史上最高の成果を残した。

70勝越えという偉業、後期3連覇、そして87勝13敗という未踏の総合成績。
この3人が揃ったのはわずか3シーズンだったが、そのインパクトはNBA史に永遠に刻まれたままだ…。

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