77-コービー・ブライアント
空中で絵になる男──コービー・ブライアントという万能スラマー
NBAの歴史に名を刻むスーパースターたちは数多く存在するが、「空中で絵になる」存在というのは極めて限られている。マイケル・ジョーダン、ビンス・カーター、そしてコービー・ブライアント。この3人は、ジャンプしたその一瞬に、まるで一枚のアートを描いたような美しさを持っていた。
ここでは“スコアラー”でも“クラッチシューター”でもなく、“ダンカー”としてのコービー・ブライアントにフォーカスしていく。24番と8番、それぞれの時代の特徴、彼が試合中にこだわったダンク、そして伝説のスラムダンクコンテストまで。華麗さ、創造性、完成度、そのすべてが詰まった“コービーダンク”の魅力に迫る。
ダンクの「芸術点」で勝負するタイプ
まず明確にしておきたいのは、コービーは“パワーダンカー”ではなかった。シャックやドワイト・ハワードのようなリングごと破壊するような圧倒的なフィジカルでねじ伏せるタイプではない。彼のダンクの本質は「美しさ」と「洗練された完成度」にある。
空中での体の使い方、膝の折り方、ボールの持ち方、さらには着地するまでの流れ──それらすべてが完璧なバランスで融合されていた。
コービーは自分のダンクを「一つの動作芸術」として捉えていたフシがある。NBAの試合という緊張感あふれる舞台で、それでもなお“魅せる”ことにこだわる姿勢。そこには“ジョーダンを超える”という強烈な意志も見え隠れする。
8番時代:若さと爆発力が生んだアクロバティックなダンク集
1996年にNBA入りした当時のコービーは、まだガリガリで線が細かったが、それを補って余りある爆発的な跳躍力を持っていた。彼が「空中の支配者」として頭角を現し始めたのは、この8番時代。
特筆すべきは1997年のスラムダンクコンテスト。まだルーキーだった彼は、最後に美しい「レッグスルーダンク(股抜き)」を決めて優勝。このときのコービーの動きは、ダンクの芸術性という意味で大きな評価を受けた。
当時の彼のダンクは、以下のような多様性と創造性に満ちていた。
- 360°スピンダンク:試合中でも軽々と360°を決めていた。まさにスラムダンカーとしての天賦の才。
- ウィンドミル:大きく腕を振り抜きながら決めるウィンドミルも得意。長いリーチとタイミングの巧みさが光る。
- バックドアカットからのアリウープ:シャープなカットと連携から、鋭く飛び込んでのダンクは多くのファンを熱狂させた。
この頃のコービーは、「試合で魅せる」という意味でも圧倒的だった。コンテストだけではない。実戦であのアクロバティックな動きを出せる選手こそ、本物のスラマーだ。
24番時代:選び抜かれた“芸術的フィニッシュ”としてのダンク
2006年に背番号を24に変えてからのコービーは、明らかに“完成されたスコアラー”としての色が濃くなった。跳躍力はやや落ちたが、それでも選び抜かれたタイミングで放たれるダンクは、一つ一つが芸術作品のようだった。
特に印象的なのが、以下の2種類のダンク。
- トマホーク:一度ボールを頭の後ろまで引き、腕を振り下ろすようにして叩き込むダンク。コービーはこのトマホークを実に美しく、シャープに仕上げていた。
- リバースダンク:ベースラインをえぐって反対側から逆手で沈めるリバースダンクは、まさに“お手本”と言える完成度。
この時代のコービーのダンクは、「ここぞ」という場面でしか見られなかったぶん、一つ一つのインパクトが強かった。そして何より、若さの勢いではなく、「熟練された美」のような趣きがあった。
なぜコービーのダンクは「絵になる」のか?
それは技術、跳躍力、タイミング、センス、そして「魅せよう」とする意志。そのすべてが高度に融合しているから。
たとえばマイケル・ジョーダンは“神のような美しさ”を持ち、ビンス・カーターは“衝撃的な跳躍”で記憶に残る。しかし、コービーはその中間。両者の長所をバランスよく持ち合わせた、“万能型”のスラムアーティストだった。
彼のダンクは、単に「点を取る手段」ではなく、「美しさを証明する手段」だったのかもしれない。
ダンクの美学は、コービーにこそふさわしい
「コービー・ブライアント=ダンク」というイメージを強く持っている人は意外と少ないかもしれない。なぜなら、彼はあまりにも多彩で、シュート、パス、ディフェンス、メンタリティすべてが揃っていたから。
でも、試合を見返してみてほしい。あの鋭いステップから一気に跳び上がり、リングに叩き込む一瞬。あるいはスピンからのリバース。トランジションでの360°。そのどれもが、美しさと迫力を兼ね備えている。
8番時代の若さと創造性。
24番時代の熟練と選択の美学。
どちらの時代にも、コービーはコービーにしかできないダンクを残している。
そしてその一つ一つが、今もなお多くのファンの記憶に刻まれている。
まるで空中で絵を描いたように、、、
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