NBAポスターコラム41:ビンス・カーターという“記憶”の選手、、、彼が残した本当の価値とは?

NBAポスターコラム

41-ビンス・カーター

「Let’s go home!!!」──伝説の2000年スラムダンク・コンテスト

すべてを変えた1本目のダンク

2000年2月12日、オークランド・アリーナ。オールスター・ウィークエンドのスラムダンク・コンテストで、NBAの歴史が変わった。その年の主役は他でもない、トロント・ラプターズのビンス・カーターだった。

彼の1本目のダンクは見慣れた360°ではない。「逆回転の360°ウィンドミル」。あまりにも滑らかで、あまりにも美しく、そして想像をはるかに超えていた。

会場は騒然。観客も、選手も、審査員も、全員が口をあんぐり開けていた。そして、実況が叫ぶ。「Let’s go home! Let’s go home!!!」──「もう帰ろうぜ!終わった、これで決まりだ!」という意味だ。

その瞬間、ただのショーだったスラムダンク・コンテストが、“伝説”に変わった。

「スラムダンク・コンテストの再定義」

1990年代後半、スラムダンクコンテストは正直、マンネリ気味だった。ドミニク・ウィルキンスやマイケル・ジョーダンが築いた黄金期は遠く、1998年には開催すらされなかった。

その沈滞ムードを、たった一人のプレイヤーが完全に吹き飛ばす。ビンス・カーターの2000年のパフォーマンスは、ただ「すごい」だけじゃない。ジャンプの高さやパワーだけじゃない。滞空時間の異常な長さ、美しすぎる空中姿勢、そして“驚き”の演出力。すべてが、完成されていた。

「跳べば決まる」だけじゃない、芸術と感情の融合

ビンス・カーターのすごさは、単にジャンプ力があるとか、パワーがあるとか、そういう話じゃない。彼のダンクには“クリエイティビティ”と“芸術性”があった。

一瞬の間に、どう美しく見せるか、どうインパクトを与えるか、どう観客を驚かせるかまで計算していた。その完成度の高さは見る者を魅了した。

だからこそ、彼のダンクは、現役のオールスター選手たちまでもを「観客」に変えた。シャック、ケビン・ガーネット、同じ競技に参加したダンカーですら、少年のような顔で驚きと笑顔を浮かべていたあの光景。それこそが、カーターの存在の証だった。

「歴代最高ダンカー」は誰か、という問い

ダンクといえばドミニク・ウィルキンス、マイケル・ジョーダン、ジェイソン・リチャードソン、ザック・ラヴィーン──多くの名が挙がる。その中で、カーターは間違いなく「最もインパクトを与えた男」として語り継がれている。

カーターのダンクには“時代を変える力”があった。2000年の彼のパフォーマンスは、それ以降のスラムダンク・コンテストに「新たな基準」を設定した。高さやパワーだけではなく、創造性、芸術性、観客を驚かせる“ストーリー”が求められるようになった。

彼の登場以降、スラムダンク・コンテストの難易度は跳ね上がった。360°ウィンドミルや股下ダンクはもはや当たり前。それでも、2000年のカーターの衝撃は“今でも別格”として語られる。

「偉大な75人」に選ばれなかった男

2021年、NBAは創設75周年を記念して「NBA75周年記念チーム(The NBA 75)」を発表した。選ばれたのは、75人──いや、実際には76人の偉大な選手たちだった。

しかし、そこにビンス・カーターの名前はなかった。

一部のファンにとって、それはショックだった。「20年以上プレーし、4つの年代にまたがってコートに立った最初の選手」。そんな偉業を成し遂げた彼が外されたことに、疑問の声は多かった。

だが、これがカーターという選手の“立ち位置”を象徴しているのかもしれない。彼は圧倒的なアスリートでありながら、MVPも優勝も掴んでいない。スタッツも安定していたが、突出していた時期は短い。

でも、彼のプレーは“記憶”に残るものだった。心に焼きつくプレー。記録では測れない、“美しさと衝撃”の融合。それこそが、カーターの真価だ。

それでも、ビンス・カーターはレジェンドだ

最初のNBAシーズンは1998-99。そして引退したのは、なんと2020年。1990年代、2000年代、2010年代、そして2020年代まで──NBAの4つのディケイドを生きた唯一のプレーヤー。

ダンクの魔術師としてデビューし、ベテランの知恵袋として後進を導き、シューターとしてチームを支え、そして引退するまで愛され続けた男。

“優勝”や“殿堂”といった言葉以上に、バスケットボールを“ショー”として魅せてくれたその姿は、間違いなくNBAの財産だ。

あの日、実況は言った。

「Let’s go home!」

いや、むしろ──「ビンス・カーターが“家”だった」
あの夜、彼の空中遊泳が、世界中のファンの心を一つにした。

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