NBAポスターコラム36:1997年NBAオールスター:グレン・ライスが輝き、レジェンドたちが祝福された夜。

NBAポスターコラム

36-オールスター1997

シャーロットのスナイパー、グレン・ライスがMVPを獲得

1997年2月9日、クリーブランド・キャバリアーズの本拠地で開催されたNBAオールスターゲーム。この試合の主役は、決してスーパースターのカテゴリーに分類される選手ではなかった。MVPに輝いたのはシャーロット・ホーネッツのグレン・ライス。
彼はこの試合で26得点(うち20得点を第3クォーターに集中)を叩き出し、記録にも記憶にも残る活躍を見せた。

アロンゾとのトレードでたどり着いたシャーロット

グレン・ライスのキャリアは1989年にマイアミ・ヒートでスタートする。当時のヒートは新興チームで、彼はスコアリングを支えるエースとしての成長を期待されていた。しかしチームはなかなか勝てず、再建への流れのなかで、1995年にアロンゾ・モーニングとの大型トレードでシャーロット・ホーネッツに移籍する。

結果的にこの移籍がライスのキャリアを飛躍させる転機となった。ホーネッツではポストプレイヤーのラリー・ジョンソンやガードのマグジー・ボーグスとの共存のなかで、アウトサイドに自由を得たライスがスコアリングマシンとして覚醒。特に1996-97シーズンは平均26.8得点を記録し、キャリアハイを達成。この年のオールスターでも堂々たる存在感を見せつけた。

ミドル~ロングレンジのジャンパー

ライスのオフェンスの核は3ポイントを中心としたミドル~ロングレンジのジャンパー。スピードや身体能力で勝負するタイプではなかったが、とにかくシュートフォームが美しく、リズムに乗ると手が付けられない。

キャッチ&シュートでは、スクリーンを駆け抜けてからのセットが速く、手首の返しにムダがない。ピュアシューターとして完成度が高く、立て続けにボールが回ってくる展開になると、爆発的なスコアリングが可能だった。

決して1on1で派手に抜くタイプではなかったが、マークマンとの微妙な間合いをつくるテクニックに長けていた。

では、グレン・ライスは現代NBAで通用するか?

ここが議論のポイントになる。もしグレン・ライスが現代のNBAにいたら、果たしてチームに重宝される存在になれるのか?

オフェンス面は“即戦力”

現代NBAでは3ポイントの重要性が増しており、ウィングのシュート力が重視される。キャッチ&シュートに関して言えば、グレン・ライスの精度とタイミングは今でも間違いなく武器になる。
また、彼は単なるスポットアップシューターではなく、ミッドレンジでも安定して点が取れる万能型。スクリーナーとの連携やトランジションでのストレッチ能力もあり、今の時代でもローテーションプレイヤー以上の価値は持てる。

問題はディフェンス

ただし、現代バスケで重宝される“3&D”の「D(守備)」に関しては疑問符が付く。ライスはサイズはあった(身長201cm)ものの、スピードやクイックネスでは並レベル。ヘルプディフェンスやスイッチ守備が基本となる今のNBAでは、チームの守備スキームのなかで負担にならないかどうかがカギとなる。

それでも、シュート力だけで見ればベンチからの即戦力として十分機能するし、起用法次第ではロールプレイヤーとして10年以上活躍することも可能だろう。ケビン・ハーターやボーヤン・ボグダノビッチのようなタイプとして、現代でも存在感を発揮できるはずだ。

NBA50周年の祝祭と「偉大なる50人」

1997年のオールスターは、ただの華やかなイベントではなかった。NBAは1946年に創設され、1996年で50周年。これを記念して、「NBA史上50人の偉大な選手(50 Greatest Players in NBA History)」が選出され、その栄誉を称えるセレモニーがオールスター期間中に行われた。

マイケル・ジョーダン、マジック・ジョンソン、ラリー・バード、ビル・ラッセル、ウィルト・チェンバレン、カリーム・アブドゥル=ジャバー…。錚々たる顔ぶれが一堂に会したその光景は、まさにバスケットボールの歴史が凝縮された瞬間だった。

このイベントでは、偉大な選手50人だけでなく、「10人の偉大なヘッドコーチ」と「NBA史における10の偉大なチーム」も発表された。まさに“NBAの殿堂”がリアルタイムで作られたような瞬間だった。

コービー・ブライアント、17歳のダンク王

この年のオールスターには、もう一つの注目ポイントがあった。それがスラムダンクコンテストでの17歳、コービー・ブライアントの優勝。NBA入りしたばかりの高校卒ルーキーが、プロの舞台で堂々たるダンクを披露し、観客を沸かせた。

彼のダンクは派手さよりも「身体制御の美しさ」と「恐れ知らずで生意気」な部分が際立ち、すでに“天才”の片鱗を感じさせた。
このときはまだ、彼が20年に渡ってNBAの象徴になるとは誰も予想していなかった。しかしこの夜、NBAの未来が確かにそこにいた。

1997年のオールスターは、NBAの“過去・未来”を凝縮した奇跡の舞台

1997年のオールスターゲームは、ひとつの試合にとどまらず、NBAの「過去(レジェンドたちの表彰)」「未来(コービーの登場)」が完璧なバランスで交錯した奇跡的なイベントだった。

グレン・ライスのような“隠れたMVP”が主役になれるオールスター。そしてNBAというリーグが、過去を尊重しながら未来へと歩んでいく姿勢を見せた象徴的な大会。それが1997年だった。

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