NBAポスターコラム33:才能と痛みと──アンソニー・デイビスが“完全体”になる日は来るのか、、、。

NBAポスターコラム

33-アンソニー・デイビス

アンソニー・デイビスという希望と不安の象徴

ケンタッキーで全米制覇、そしてロンドン五輪へ

アンソニー・デイビスの名が全米に響き渡ったのは、2011-12シーズンのNCAA。ケンタッキー大学のエースとして全米制覇を成し遂げ、すぐさまロンドン五輪メンバーに抜擢された。大学1年でオリンピック金メダリストになるなんて前代未聞。しかもそのチームは、コービー、レブロン、KDらを擁するチームだ。

あの時点で、すでにデイビスはディフェンスにおいて“完成品”に近かった。ブロック、リバウンド、ヘルプディフェンス、どれを取っても大学レベルでは異次元。得点は未完成でも、守備で試合を支配できる選手は貴重だったし、NBAスカウトたちはその守備力に惚れ込んでいた。

そして2012年、当然のようにドラフト全体1位でニューオーリンズ・ホーネッツ(後のペリカンズ)に指名される。未来を託すには十分すぎる逸材。フランチャイズの希望だった。

ペリカンズ元年の2年目──希望と不安の混在

2013年、チーム名がホーネッツからペリカンズへと変更。フランチャイズの「元年」にふさわしいのは誰かといえば、それはアンソニー・デイビスしかいなかった。2年目のシーズンを迎えたデイビスは、もはやルーキーではなかった。

この年から明確に「エース」の責任を負い始める。ペイントエリア内での支配力は言うまでもなく、速攻でのフィニッシュ、アリウープ、スピンムーブといった“未完成だったはずの攻撃スキル”が進化を見せていた。

でも、その才能には常に“ある懸念”が付きまとっていた。

それが「怪我」だ。

成長を期待されているのに、どこかしらを痛めては離脱する。骨折、捻挫、肩の故障、背中の痛み、そしてまた復帰。そんな繰り返しが始まったのもこの頃。毎年のように「怪我がなければMVP級」と言われ続けた。

サイズに似合わぬ身体能力と機動力

デイビスの魅力は、ただのビッグマンじゃないことだ。身長208cm、ウイングスパン227cmのサイズを持ちながら、まるでスモールフォワードのようなフットワーク。走れる、飛べる、カバーできる範囲が異常に広い。

ケンタッキー時代にガードからコンバートされた背景もあって、足の動きが軽い。そのおかげでスイッチディフェンスにも対応できるし、トランジションにも参加できる。センターとしては異常値だ。

この機動力と身体能力があるからこそ、ペリカンズは彼を中心にチームを構築しようとしたし、チームの未来を背負わせた。でも、あまりにも体に負担がかかるスタイルでもあった。すぐに怪我と隣り合わせになる。

進化するオフェンス──3Pラインまで支配

守備面でのインパクトは最初から圧倒的だったが、オフェンスの幅が広がってきたのは2015年以降。ペイント内だけじゃなく、ミッドレンジ、果ては3Pまで射程に入れてきた。ジャンプショットもフォームが綺麗で、決して無理に打っている感じがない。

プレイスタイルも柔軟で、ピック&ロール、ピック&ポップ、ポストアップ、フェイスアップと何でもできる。加えてフリースローも上手い。ビッグマンとしては破格の精度で、試合終盤でも交代させる必要がない。

もはや“アンストッパブル”と表現して差し支えない。

「眉毛を恐れよ」──商標登録されたトレードマーク

そして、デイビスにはもう一つの“武器”がある。

それが一文字の眉毛。

高校時代から注目されていたその眉毛は、彼のアイデンティティでもあった。そして、それを逆手に取ったのが「Fear the Brow(眉毛を恐れよ)」というフレーズ。これをデイビスは商標登録している。

「僕の一文字眉を利用した人が、不正に金儲けするような事態を防ぎたかった。とてもユニークな眉毛なので、家族と相談して商標登録をすることを決意した。」

この発言からもわかるように、デイビスは自分のキャラクターを明確に自覚している。NBAはスポーツであると同時にビジネス。選手もブランド価値を持つべきだという考えが浸透する中、彼は眉毛を武器にしてセルフブランディングに成功していた。

「健康でさえあれば」──NBAの永遠の“もしも”枠

アンソニー・デイビスは、NBAで最も“もしも”が語られる選手の一人だ。

「もしも怪我がなければ…」
「もしもフルシーズン戦えていれば…」
「もしもこのプレイオフに万全だったなら…」

こんな仮定が毎年繰り返される。それはつまり、彼の能力が“本物”だからに他ならない。

現実として、レイカーズ移籍後の2020年に優勝し、チャンピオンリングを手にした。その時のプレイオフでの支配力は、リーグ最高クラスだった。レブロンとのデュオでリーグを制した姿は、「やっぱりこの男は特別だ」と誰もが思わせるものだった。

でも、それでも怪我の不安は消えない。出場試合数の少なさ、急な欠場、コンディションのムラ…。評価を下げるには十分すぎる要素もある。

未来は眉毛に託されたまま

アンソニー・デイビスは、NBAにおける「才能とリスクの象徴」だ。

サイズ、スキル、守備、得点、すべてを兼ね備えているのに、「健康」がすべてを台無しにしてしまう可能性がある。それでも、2020年の優勝が示すように、“万全のデイビス”は間違いなくチームを優勝に導ける力を持っている。

キャリアを通じて、彼は常に「完全体になれるか?」という問いと戦い続けている。その問いに、完全なる“イエス”で答える日が来るかどうか。

それは、彼の眉毛の下にある目が見据える未来にかかっている。

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