個で打開するスーパースター、ルカ・ドンチッチ
現代NBAにおいて、個の力で局面を打開できる選手は限られている。その中で、ルカ・ドンチッチは間違いなくトップクラスの存在だ。テクニック、シュート力、フィジカルを兼ね備え、アイソレーションではリーグ屈指の得点力を誇る。2021-22、22-23シーズンでアイソレーションの得点がリーグ1位という数字が、その圧倒的な1on1の強さを証明している。
本記事では、ドンチッチの持つスキルセット、彼のプレースタイルの特徴、そして現代バスケットボールにおける彼の立ち位置について詳しく解説していく。
アイソレーションの鬼—1on1で止められない理由
ドンチッチの最大の強みは、1on1での得点力にある。リーグ屈指のスコアラーたちがひしめく中で、彼のアイソレーション得点は2021-22、22-23シーズンと2年連続でリーグ1位を記録。これは単なるスタッツではなく、実際の試合を見れば、その圧倒的な個の強さを実感できる。
1. 緩急を駆使したムーブ
ドンチッチのプレースタイルは、スピードや跳躍力に依存しない。彼はむしろ「緩急」の使い方に秀でており、相手ディフェンダーの動きを見極めながら、自分のリズムで攻める。トップスピードから一気に減速し、逆に遅い動きから突然の加速で抜き去る。これにより、ディフェンダーはタイミングを合わせるのが極めて難しくなる。
2. フィジカルの強さとポストプレー
一般的なポイントガードと比べてドンチッチのサイズは大きい。身長201cm、体重104kgの恵まれたフィジカルは、特にポストアップ時に威力を発揮する。ガードの中でもサイズがある彼は、スイッチを狙ってミスマッチを作り、ポストでじっくりと攻めるスタイルも得意だ。特に、小柄なガードがスイッチしてきた場合は、迷わずゴール下へ押し込んで確実に得点する。
3. 高精度のシュート力
ドンチッチはアウトサイドシュートの精度も高く、ステップバック3Pは彼の代名詞とも言える武器だ。特に左45度の位置からのステップバックは成功率が高く、相手ディフェンダーにとっては守るのが非常に厄介。ディープレンジからも打てるため、ディフェンダーが距離を詰めるとドライブで抜かれるという、まさに「詰み」の状況を作り出せる。
ポイントガードとしての視点—過小評価されるパス能力
ドンチッチはスコアラーとしての評価が高いが、彼自身はパスの重要性を強く意識している。「パスは最も過小評価されているスキルだ」と彼は語る。事実、彼のプレーメイク能力は非常に高く、アシスト数も常にリーグ上位にランクインする。
1. コートビジョンの広さ
ドンチッチのパス能力を支えているのは、その広いコートビジョンだ。彼は相手ディフェンスの動きを瞬時に読み取り、どこにパスを送るべきかを的確に判断する。この視野の広さは、ヨーロッパ時代から鍛えられてきたものであり、NBAのスピーディな展開でも遺憾なく発揮されている。
2. 左右どちらの手でも出せる正確なパス
彼のパスは右手だけでなく、左手でも精度が高い。これは、ボールの出しどころを読ませないという点で大きなメリットになる。特に、ドライブからのキックアウト、ピック&ロールのポケットパス、ノールックパスなど、多彩なバリエーションを持つ。
3. 高難度のアシスト
ドンチッチは派手なアシストも多く、観客を沸かせるプレーメイクを見せる。ノールックパスやワンハンドでのダイレクトパス、トラフィックの中でのバウンスパスなど、普通の選手には難しいプレーも難なくこなす。
現代バスケットボールとポジションの概念
「バスケを楽しめさえすれば幸せだけど、あえて言うならPGかな」と語るドンチッチだが、彼のプレースタイルはもはや伝統的なPGの枠を超えている。
近年のNBAでは、ポジションの概念が徐々に希薄になってきている。身長が高くてもガードとしてプレーするドンチッチはまさにその象徴的な存在だ。
1. ポイントフォワードとしての役割
ドンチッチは、ポイントガードとしてプレーする一方で、フォワード的な動きもこなす。ポストプレーで相手を押し込んだり、リバウンドからそのままボールをプッシュしてトランジションを作り出したりするシーンも多い。これは、従来のPGとは一線を画すスタイルだ。
2. 「万能型」の進化形
かつてレブロン・ジェームズやマジック・ジョンソンが示した「万能型プレーヤー」の系譜を、ドンチッチはより現代的に進化させている。スコアリング能力とプレーメイク能力を高次元で融合させ、試合の流れを自在に操ることができる。
まとめ
ルカ・ドンチッチは、1on1で無類の強さを誇るスコアラーでありながら、プレーメイクでもリーグ屈指の才能を持つ選手だ。彼の緩急を生かしたムーブ、フィジカルの強さ、精度の高いシュート、広いコートビジョンなど、すべてが現代NBAでトップレベルにある。
ポジションの概念が薄れる中で、彼のようなプレースタイルは今後のNBAのトレンドを示唆するものでもある。アイソレーションの得点王として君臨しながら、パスの重要性を強く認識している彼は、今後もリーグを牽引する存在であり続けるだろう。
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