NBA史に残る“ティップ”の技術、デニス・ロッドマンのリバウンドの哲学…。

「リバウンドは掴むものではなく触れるもの」

デニス・ロッドマンは、NBA史上でも稀にみるなリバウンダーとして知られている。彼のリバウンドに対する考え方は、身体能力に頼るものではなく、緻密に計算された独自の理論に基づいていた。「リバウンドは掴むものではなく触れるもの」という考えだ。ロッドマンは、リバウンドは掴むだけではなく、空中でボールに触れ続けることが重要だと考えた。それに基づいて導き出したのが「ティップ」という技術だった。

“ティップ”の哲学

ロッドマンのティップは偶然の産物ではない。リバウンドを制するためには、相手より先にボールに触れ、そのボールをコントロールすることが重要だ。なぜなら最初に触れた者のリズムで落ちてくるからだ。“弾いて”自分の思ったところに落とし、そのルーズボールを取る感覚に近い。

ロッドマンは他人には真似できない自らの特徴を生かし、何度も空中に飛び上がるうちにボールを手繰り寄せて自分のものにしていた。これを可能にしたのが空中でのボールコントロールだ。ボールをティップし、それを自分の思ったところにコントロールすることができたのである。

ビデオによる研究

ロッドマンのリバウンド能力を語る上で、ビデオでの研究の重要性を逃すことはできない。対戦相手の選手のシュートが外れる時の傾向を見て、ボールがどの方向に跳ね返るかを予想し、試合中に最適なポジションを確保するようにしていた。

ロッドマンは試合ごとに異なる対戦相手のシュートの外れる傾向を捉え、それに応じたリバウンド戦略を練り上げていた。

空中でのボディコントロール

ロッドマンはティップの際に、空中での卓越したボディコントロールを見せていた。自分の近くにボールを手繰り寄せるティップは、何度も飛び上がらなければならない。普通の選手であれば、空中で一度だけでリバウンドを確保しようとする。そのためにスクリーンアウトでポジションを確保する。しかしロッドマンはポジションを取られても、背後からティップを繰り返し、自らに有利な状況を作り出す術に長けていた。

空中でのボディコントロールとは、着地を見据えてのことだけではなく、素早く次の跳躍に備えて体勢を立て直すことでもある。連続でジャンプする上で、どの方向に身体を向けて着地し、どの位置にボールが落ち、どの程度の跳躍で先にボールを触れるのかを瞬時に計算できた。これはロッドマンの高い空間認識力と瞬間の判断力、そして優れた脚力があればこそだ。

身体能力、頭脳、気迫の融合

さらにロッドマンの総合的なリバウンド技術を支えていたのは、身体能力、頭脳、そして気迫の三要素だった。これによりリバウンドを完全に支配していた。相手のシュートの傾向を研究し、最適なポジションを選び、ボールに触れるタイミングを見据えた冷静な判断があってこそ、彼のリバウンド力が真価を発揮した。

また、ロッドマンの気迫も忘れてはならない要素だ。ロッドマンはリバウンド奪うことだけを「仕事」とする強い意志を持っていた。非難を恐れるのではなく、そこに勇気を持ち、立ち向かう。だからこそ「絶対にボールを自分の手に収める」という気迫を感じる。リバウンドの場面で、決して諦めない姿勢が、相手に対して圧倒的な存在感を示していた。

7年連続リバウンド王の軌跡

ロッドマンは、NBA史上唯一となる7年連続リバウンド王(1992年から1998年)という偉業を成し遂げた。ロッドマンの7連覇の始まりはデトロイト・ピストンズでのキャリアからだが、リバウンド王としての支配はシカゴ・ブルズで特に強調される。リバウンド王を複数回獲得する選手はいるが、7年連続という記録は、ロッドマンがかなりその分野で注力していたことを示している。

この7年間の中で、ロッドマンは平均リバウンド数で15.0以上をマークし、1991-92シーズンにはキャリアハイの18.7リバウンドを記録している。

結論

デニス・ロッドマンのリバウンドに対するアプローチは、革命的だった。彼は「掴む」のではなく「触る」ことでリバウンドを制するという、他の選手とは一線を画す哲学を持ち、その哲学に基づいたやり方で、時にゲームを支配した。身体能力に加えてビデオ研究によるシュート傾向の分析、空中でのボールコントロールとボディコントロール、そして強靭な意志を組み合わせたロッドマンの『ティップ・リバウンド』は、NBAの歴史の1ページに刻まれている。

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