NBAポスターコラム133:ドラフトロッタリー無縁から王座へ――2019ラプターズの奇跡の軌跡・・・。

NBAポスターコラム
133-優勝トロント・ラプターズ

133-優勝トロント・ラプターズ

カナダ初の王者、2019トロント・ラプターズの軌跡

カワイ・レナード加入とチームの覚悟

2018年夏、トロント・ラプターズは大胆な決断を下した。長年のフランチャイズプレイヤー、デマー・デローザンを放出し、サンアントニオ・スパーズからカワイ・レナードを獲得したのだ。レナードは当時ケガや不信感からスパーズと関係がこじれていた。加えて契約は残り1年。つまり「1年限りのレンタル」に終わる可能性が高いギャンブルだった。

フロントはこの賭けに勝つために、あらゆる環境を整えた。シーズン中はレナードの負担を軽減するために「ロードマネジメント」を徹底。出場試合数は60にとどまったが、健康を保ち、ポストシーズンで最大限の力を発揮させる狙いがあった。チーム全体も「この1年で必ず勝ち切る」という覚悟を持ち、組織として優勝を見据えた構築を進めていった。

シーズン中の補強と完成度の高まり

レギュラーシーズンを戦う中、ラプターズはさらに戦力を底上げする。2019年2月のトレード期限で、メンフィス・グリズリーズからマルク・ガソルを獲得。技巧派センターの加入は大きかった。特にイーストのライバルに対抗する上で、彼の守備力とパス能力は必須だった。

フィラデルフィア・セブンティシクサーズにはジョエル・エンビード、ミルウォーキー・バックスにはヤニス・アデトクンボ。どちらもインサイドから圧倒するスターを抱えていた。ガソルはそのサイズと経験で彼らを抑止し、レナードやカイル・ラウリー、若手のパスカル・シアカムと連動して堅い守備網を形成していった。

プレイオフ開幕 ― レナードの覚醒

プレーオフ初戦の相手はオーランド・マジック。第1戦を落とす波乱のスタートだったが、以降はレナードが攻守で支配し、4勝1敗でシリーズを突破。ここから彼の「怪物的なパフォーマンス」が続いていく。

続くカンファレンス準決勝、相手はエンビード率いるシクサーズ。このシリーズは死闘だった。第7戦の最終盤、同点で迎えた残り4秒。レナードが放った右コーナーからのジャンプショットはリングに4度弾かれ、最後にネットを通過。伝説の「バウンス・ショット」が生まれた瞬間だ。ラプターズは4勝3敗で辛くも勝ち上がり、イースト決勝へ進む。

ヤニス封じと初のファイナル進出

イースタン・カンファレンス決勝の相手は60勝を挙げたバックス。MVPヤニスがゴールに突進してくる破壊力は凄まじかったが、ここでガソルの存在が光る。インサイドで壁を作り、周囲の選手もヘルプを素早く回す徹底した守備でヤニスを封じ込めた。

シリーズ序盤は2連敗を喫したものの、第3戦からラプターズは修正。レナードは攻守でリーダーシップを発揮し、ラウリーやシアカムも勢いを取り戻す。最終的には4連勝で逆転突破。フランチャイズ史上初めてNBAファイナルに駒を進めた。

王者ウォリアーズの苦境

一方、西の覇者は黄金期を築いていたゴールデンステイト・ウォリアーズ。ステフィン・カリー、クレイ・トンプソン、ケビン・デュラント、ドレイモンド・グリーンと、王朝と呼ばれるにふさわしい布陣だった。

しかし2019年プレーオフは、選手たちの疲労とケガが重なっていくシーズンとなった。カンファレンス準決勝でカリーが左手中指を脱臼、デュラントは右ふくらはぎを痛めて戦線離脱。さらにイグダーラも故障を抱え、チームは満身創痍の状態でファイナルに挑むことになる。

ファイナル ― 傷だらけの王者を撃破

第1戦はトロントのホーム、スコシアバンク・アリーナで行われた。カナダ全土が熱狂し、平均330万人がテレビにかじりついた。シアカムが32得点の大爆発を見せ、ラプターズが先勝。勢いそのままにシリーズをリードしていく。

第5戦、復帰したデュラントが序盤に3本の3Pを沈めるも、その直後に右足を再び痛め退場。診断はアキレス腱断裂という致命的なケガだった。さらに第6戦では、奮闘していたトンプソンがダンク着地で左膝を負傷し、そのままコートを去った。結果は前十字靭帯断裂。相次ぐ悲劇に、カリーも思わず座り込むほどだった。

そんな中でもラプターズは冷静だった。レナードが攻守でチームを引っ張り、ラウリーがリーダーシップを発揮。ガソルやシアカムも的確に役割をこなし、第6戦を104-100で制してシリーズ4勝2敗。ついに悲願のNBAチャンピオンに輝いた。

レナードの偉業と歴史的快挙

レナードはシリーズ平均28.5得点、9.8リバウンドを記録し、堂々のファイナルMVPを獲得。スパーズ時代の2014年以来、2度目の受賞だった。異なるチームでの受賞はカリーム・アブドゥル=ジャバー、レブロン・ジェームズに続く史上3人目。そしてイーストとウエスト、両カンファレンスのチームでMVPを取った初の選手となった。

トロントに本拠を置くチームとして初の王座は、カナダのスポーツ史に残る大事件だった。最終第6戦の視聴者数は770万人に達し、優勝パレードには推定200万人が集結。国全体が歓喜に包まれた。

優勝の意味とレナードの言葉

シリーズを制した後、レナードは「俺は優勝トロフィーを手に入れるためにプレーしている。夏の間、シーズン中もずっとワークアウトしてきた。その努力が報われて最高さ」と語った。無口で感情を表に出さない彼の言葉は、重みを持って響いた。

フロントの覚悟、ロードマネジメント、シーズン中の的確な補強、そして選手たちの結束。そのすべてが結実した結果が2019年の優勝だった。ラプターズは“ドラフト1位指名なしで頂点に立った初めてのチーム”として歴史に刻まれ、NBAの版図をアメリカからカナダへ広げたのである。

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