NBAポスターコラム54:スラムダンクコンテスト2連覇もさることながら、ゲームタイムダンカーでもあった「J-Rich」。

NBAポスターコラム

54-ジェイソン・リチャードソン

J-Rich――華麗なる空中戦士の真価とは

スラムダンクコンテスト連覇という派手な名刺代わり

2002年と2003年、ジェイソン・リチャードソンはNBAスラムダンクコンテストで2連覇を達成。カップリングのように綺麗な踏み切りから、空中で芸術的な体勢に入り、そのままフィニッシュまで一気に持っていく。スムーズで、柔らかく、それでいてパワフル。J-Richのダンクは美しくて強い。まさに「空を支配する男」だった。

とりわけ両足でのジャンプにこだわるスタイルは特徴的だった。通常、ランニングダンクでは片足で跳ぶ選手が多いが、彼は静止状態からでも両足踏切で豪快に跳び上がる。その爆発力は圧巻であった。

ゲームタイムでも躊躇しないダンカー

J-Richのダンクはコンテストだけにとどまらない。試合中でも平然と360°ダンクを決めにいく、まさにゲームタイムダンカーだった。

オープンコートに走れば、どんな状況でも観客を沸かせる空中芸術を披露。彼のダンクは勢いだけじゃなく、計算された美しさがある。トランジションからのアリウープ、リバース、トマホーク。どれをとってもスタイリッシュで、見る者を魅了した。

ダンクに隠れた万能性

ただ、ダンクの印象があまりに強すぎたせいで、他のスキルが正当に評価されていなかったのが惜しい。彼はただの「ハイライト要員」じゃない。実はめちゃくちゃバスケがうまい。

2003-04シーズン、ジェイソン・リチャードソンはガードとしてリーグ最多の1試合平均6.7リバウンドを記録。アウトサイドプレイヤーとしては異例のスタッツだ。体幹が強く、跳躍力も抜群。リバウンドに対する嗅覚とタイミングがずば抜けていた。

加えて、ミッドレンジから3Pラインまで、オフェンスレンジも広がっていた。キャリア初期はほぼスラッシャータイプだったが、徐々にスリーポイントの精度と試投数を上げていく。

キャリア初期から中心選手

2001年のNBAドラフト5位でゴールデンステイト・ウォリアーズに指名されたJ-Richは、ルーキーイヤーから即戦力として期待されていた。実際、新人王は逃したものの、オールルーキーチームに選出され、持ち前のバネとスピードを武器に、すぐにチームの得点源として台頭。

スピードがあり、1on1も強く、クイックネスにも優れ、ペネトレイトはもちろん、ディフェンスでも身体能力を活かしてスティールやブロックを狙うスタイル。オフェンスだけじゃなく、ディフェンスでも存在感を放っていた。

フリースローだけは永遠の課題

これだけスキルが揃っていても、唯一の泣き所がフリースロー。キャリア通算のFT%は約70%。決して壊滅的というわけじゃないが、ガードとしてはやや物足りなさが残る。

特にクラッチタイムやボーナスシチュエーションでのFT成功率は波があり、「ああ、もったいないな…」と思わせる場面も多かった。フィジカルを活かしてファウルをもらえるタイプだっただけに、ここを克服していればキャリアの評価はもっと上がっていたはず。

スクリューダンク未遂と「レブロンブロック」

忘れられないのが、あの“スクリューダンク未遂事件”。

2000年代半ば、試合中にリチャードソンが決めにいったのは、信じられないような難度のスクリューダンク。ところがその瞬間、背後から飛び込んできたのが若きレブロン・ジェームズ。まるで2004年のデトロイト・ピストンズのティショーン・プリンスがレジー・ミラーにやったような、ブロック・オン・ザ・ランの超絶ブロックをかましてきた。

まさに“テイショーン・プリンス・ブロック”の再現。あの場面、ブロックされたことで、別の意味で語り継がれるシーンになってしまった。

シャーロット〜フェニックス〜フィラデルフィアへ

ウォリアーズでキャリアを築いたあと、シャーロット・ボブキャッツ(現ホーネッツ)に移籍。ここでも中心選手として得点を量産し、チームを引っ張った。

その後はスティーブ・ナッシュのいるフェニックス・サンズに移籍し、ラン・アンド・ガンの中でアウトサイドシューターとしての役割も担うようになる。アスリートからベテランへのシフトチェンジを図りながら、チームの潤滑油として活躍した。

最終的にはフィラデルフィアでキャリアを終えたが、晩年は怪我に泣かされ、全盛期ほどの活躍はできなかった。それでもNBAファンの記憶には、あの「跳んで、舞って、叩き込む」ダンクの数々が鮮明に残っている。

まとめ:J-Richは「ダンクだけの男」じゃない

確かにJ-Richは“ダンクコンテスト王者”という印象が強い。それだけでも伝説的ではあるが、それだけにとどまらない実力者だったことをもっと語られるべき。

・ガードとしての驚異的なリバウンド力
・年々広がっていったシュートレンジ
・ゲームタイムでも披露された空中芸術
・献身的なディフェンス
・キャリアを通じて中心選手であり続けた安定感

派手なダンクで脚光を浴びた男は、地道な努力とバスケIQでキャリアを築いた真のプロフェッショナルだった。J-Rich――あの華麗な空中戦の記憶は、これからも色あせることはない。

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