1995-96シーズンのシカゴ・ブルズ:伝説の72勝10敗
ジョーダンの復帰とブルズの第二期黄金期の始まり
1995-96シーズン、マイケル・ジョーダンが完全復帰を果たしたシカゴ・ブルズは、NBA史上最強のチームの一つとして記憶されている。 このシーズン、ブルズはレギュラーシーズンで驚異的な72勝10敗を記録しているし、さらにプレーオフでも圧倒的な強さを見せつけて頂上となった。ジョーダンのリーダーシップと、その周りを固めるスコッティ・ピッペン、デニス・ロッドマンらが一丸となり、ブルズはNBAの頂点に返り咲いた。
72勝10敗のシーズン:偉業の達成
72勝10敗という成績は、それまでのNBAの歴史の中でも前例のないものものだった。ジョーダンはその年、MVPを受賞し、再びNBAの頂点に君臨することとなった。
この偉業は、その後のNBAに関しても長く語り継がれることとなり、ブルズ黄金期を象徴するシーズンとして今でもファンの記憶に残っている。
ピストンズの挑戦とフィル・ジャクソンの思惑
10年後の2005-06シーズン、デトロイト・ピストンズは驚異的な連勝を続け、ブルズの記録を破る可能性を見せた。 当時、ブルズの一員だったジャド・ブシュラーは、アリゾナ大学とブルズでのチームメイトで親友、そしてサンディエゴで近所に住むスティーブ・カーに向かって、 心配そうに言った。
「スティーブ、このままだとピストンズは僕らの記録を破るんじゃないだろうか」。
しかし、ピストンズはシーズン59戦目で11敗目を喫し、ブルズの記録を破ることは不可能となった。
そして、このシーズン11敗目の相手は奇しくも、当時ブルズのヘッドコーチだったフィル・ジャクソンが率いるロサンゼルス・レイカーズだった。
ピストンズと違い、5割前後を行ったり来たりという平凡な成績のレイカーズだが、リーグ首位のピストンズ相手に、「今季最高の出来」(ジャクソン)という試合を戦い、ピストンズを下した。
おそらく、レイカーズの選手は誰もその試合の勝利と、10年前のブルズの記録とのつながりには気付いていなかっただろう。でも、ジャクソンだけはその事実に気付いていた。
フィル・ジャクソンの冷静な視点
試合後の記者会見で、そのことについて聞かれたジャクソンは、「(試合が終わって)ロッカールームに戻る廊下でそのことを考えていた」と言い、ニヤっと笑った。ジャクソンは、かつて自らが指揮を執ったブルズの72勝10敗の記録について「別に何が何でもあの記録を守らなくてはいけないとか、そういう気持ちでいるわけではないんだ」と述べた。
しかし、そのあとジャクソンは「でも」と言葉を続けた。
「自分たちでピストンズを記録の向こう側に追いやることができたというのは、正直言って、少し楽しいことではあったね」。
記録の重みとその後の影響
ジャクソンは「いつか破られる記録」と言うが、スティーブ・カーは当時のピストンズの敗北で記録が途切れたことで、むしろあの記録が決して破られることがないという確信を深めたという。
「あの記録を達成するためには、シーズン中にほんの少しの落ち込みもあってはいけない。1試合負けただけでも、そのあと78連勝してペースを取り戻さなくてはいけない。あのときのブルズが成し遂げたことは、今から考えても本当に信じられないことだったと思う」と、カーはその困難さを強調した。
ただし、そこからおよそ10年後、ゴールデンステート・ウォリアーズのヘッドコーチに就任したスティーブ・カーは、2015-16シーズンにブルズの記録を破る73勝9敗を達成することになる。
まとめ
1995-96シーズンのシカゴ・ブルズが達成した72勝10敗という記録は、NBA史上における偉業の一つであり、フィル・ジャクソンやスティーブ・カーといった関係者たちにとっても特別な意味を持つもんだった。この記録が後のNBAに与えた影響は大きく、その後のチームや選手たちにとっても一つの目標となった。
ところが、フィル・ジャクソンのように「いつかは破られる記録」としの認識もあれば、スティーブ・カーのように「破られることのない記録」としてその価値を見る者もいた。その見解の違いにこの記録を持つ重みと意味をより一層感じさせる。
また、「破られることのない記録」をカー自身がHC務めたチームが更新するのも興味深い。
こうしたストーリーも含めて、1995-96シーズンのシカゴ・ブルズは、NBAの歴史の中で色褪せることなく、これからも語り継がれていくことだろう。
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