3ポイント全盛、ポジションレスの時代:NBAの進化と影響
スリーポイント全盛期の到来
NBAにおいて3ポイントが重要視され始めたのは、1980年代後半から90年代初頭にかけてだったが、2010年代に入ってからは「3ポイント全盛期」とも言われる時代に突入した。現代のNBAではスリーポイントが試合の流れを決める重要な武器になっている。
ステフィン・カリーを筆頭に、優れたシューターたちが3ポイントの価値を証明し、チーム全体の戦略を変えるきっかけを作った。 1本あたりの得点が2ポイントショットの1.5倍という効率の高さに加え、ディフェンスを広げる効果があるからだ。
実は変わってない3ポイントの成功率
驚くべきことに、3ポイントの成功率自体はカリーが出現しても、そこまで劇的に変化していない。 リーグ全体で見ても、3ポイント成功率は約35%前後を保っている。これは3ポイントが突然「簡単なショット」になったわけではないことを示している。
カリーやクレイ・トンプソンのような選手は、非常に高い成功率で3ポイントを決めることで知られているが、リーグ全体のシューターたちもまた、3ポイントを中心に据えたプレースタイルを採用している。これによりコーチや戦略家たちは、3ポイントをより積極的に活用する戦術を構築するようになった。
ペイントエリアでの成功率の上昇
一方でペイントエリア内のショット成功率が約5%向上しているという事実もある。
3ポイントが主流になることでディフェンスが広がり、インサイドでのスペースが確保されやすくなった。それにより3ポイントラインの外側で待ち受ける「3アウト2イン」や「4アウト1イン」といったフォーメーションが、ペイントエリア内に広いスペースを作り出し、インサイドに切り込んだプレーヤーが以前よりも効率的に得点ができるようになったことを示している。
さらに、ドライブからのキックアウトやピック&ロールを続けることで、攻撃がより効果的になっているこの現象は、かつてインサイドでの得点が困難だった時代とは対照的だ。 3ポイントラインの外側まで引き出されたビッグマンたちの不在により、ゴール下の得点はより効率的なものとなっている。
4. ポジションレスバスケットボールの台頭とジャンプシューターの衰退
3ポイント全盛と共に、ポジションレスのバスケットボールが進化を遂げた。NBAはかつて、明確なポジションに基づいてチームの戦略を組み立てていた。「ポイントガード」は司令塔としてチームを指揮し、「センター」はペイントエリアで支配力を誇示する役割を担っていた。「シューティングガード」「スモールフォワード」「パワーフォワード」など、ポジションごとに役割が明確に分かれていた。そのポジションの境界が解放され、選手たちは特定の役割に縛られない「ポジションレスバスケットボール」へと移行した。
ポジションレスバスケットボールは、選手がどのポジションに属しているかではなく、個人のスキルセットやバスケットボールIQに基づいてチームが機能することを重視するような、あるいは複数のポジションでプレーし、オフェンスとディフェンスの両方で柔軟に対応できるポジションレス時代を象徴するバスケットボールだ。
これにより、ペリメーター(中距離)でのシュートが主な武器であった選手たちの居場所が徐々に失われつつある。この変化は、ミドルシュートに依存していた選手にとって大きな影響を与えている。彼らは、より多くの3ポイントを試みるか、ペイントエリアでの得点能力を向上させる必要が生じている。ミドルシュートが得意な選手であっても、現代のNBAではスリーポイントラインの外から得点できるか、ペイントエリアに果敢に攻め入るかの選択を迫られている。
効率重視の時代:1.5倍の価値を持つ3ポイントシュート
現代NBAにおけるオフェンスの効率性を考えたとき、3ポイントシュートの価値は特に重要だ。3ポイントは、2ポイントシュートの1.5倍の得点価値を持つため、3ポイントシュートの成功率が多少低くても、効率の観点からは3ポイントを選択する。
ゴール下へのアタックも効率的な得点手段とされている。ドライブによってディフェンスを収縮させ、キックアウトし、3ポイントを放つことが、チームのオフェンス戦略において非常に重要視されている。現代のNBAではビッグマンであろうと、3ポイントシュートを打てることが求められている。
ステフィン・ゴールデンカリーとステイト・ウォリアーズ
そういったトレンドを生み出したステフィン・カリーとゴールデンステイト・ウォリアーズは、新しい時代を象徴するチームだった。2014-15シーズン、ウォリアーズはリーグを制し、NBA史上最も優れたチームの一つとして広く認められる存在となった。彼らは3ポイントシュートを武器に、従来のバスケットボールの限界を打ち破る革新的なスタイルを築いた。
カリーは、「1on1の時に心がけていることは?」という質問に対して「僕は仕掛けるドリブルは3回まで」と答えた。これは彼がウォリアーズのシステムの中で動いてることを示している。ドリブルを多用せず、システムの中でボールを動かし、オープンショットを狙う。 このアプローチは、ウォリアーズが効率的に高い成功率を目指してることを物語る。
結論:NBAの未来を見る
3ポイント全盛とポジションレスバスケットボールの時代が到来したことで、NBAは劇的に進化した。 スリーポイントシュートの増加やペイントエリアでの成功率の向上、そしてポジションレスバスケットボールの台頭によって、選手たちの役割やプレースタイルは大きく変わった。
ペリメーターでのミドルュートがかつてのような主流ではなくなり、効率を追求する時代が到来している。バスケットボールは常に進化を続けており、新たなスター選手、チームが現れるたびに、ゲームの在り方が変わっていくことだろう。
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