2004シーズンオフ、FAとなったナッシュは、サンズから熱烈なアプローチを受け、6500万ドル(当時約70億2000万円)の契約提示をされた。
そして、マブスのオーナー、マーク・キューバンにその内容を伝えた。
キューバンが同じ額に対し、 首を縦に振ってくれることを望んでの行動だった。
しかし、キューバンのリアクションは、ナッシュが期待しているものとは違った。
「私には君にこれだけの額は支払えない」 サンズでの再出発が決まった瞬間だった。
アマレ・スタウダマイアー、ジョー・ジョンソンら、 才能あふれる若手がそろっていたサンズは、リーダーとして引っ張る存在に欠けていた。
そんなチームに自分の考えを押し付けるのではなく、理解させる感じで教えることのできるナッシュはピッタリの存在だった。
各々が正しい動きをしてチャンスが来れば、PGから的確なパスが回って来る。
無理なプレーを強行してシュートを外すよりもずっとやりやすく、シュート成功率も高くなる。
NBA選手としてまだ成熟しきれていないサンズの若手は、ナッシュとのプレーを通してアンセルフィッシュなプレーをいかにうまく機能させ、勝利につなげるかを学んだ。
サンズの勢いは、シーズン開幕から最後まで止まることがなかった。
そして2004-05シーズン、プレーオフのセミファイナルはマブス戦だった。
ナッシュには負けられないという意地があった。
その気持ちは自分の個人技ではなく、これまでと同じくチームメイトを生かすプレーで現れた。
そして、流れが相手に移ったときには、自らのシュートで流れを取り戻す。
「決してあきらめてはいけない」という気持ちを、ナッシュはそうすることでチームメイトに伝えた。
ナッシュはシーズンMVPにふさわしい働きを見せた。
昨オフ、マブスから受けた苦い思いもすべて自分の力でプラスに変えた。
プレーオフを経験し、スタウダマイアーら、サンズの若手も大きく成長させた。
追伸、ステフォン・マーブリーが少々困惑しながらもスティーブ・ナッシュに対し、適切と思える説明を展開した。
「彼はとても素早い、、、。だけどそれだけではなく、動きがまるで読めないんだ。前に突っ込んでくるかと思えば、急に横に動いたりする。抜かれると思って身構えたら、ただサイドステップするだけだったり。あるいはペイント内で急に立ち止まって、ビッグマンがゴール周辺でジャンプしたと思ったら、その瞬間にフックショットを放つような感じでパスを送ったりね」。
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