持ち前の高さと、身体接触の強さ、熟練の域に達したローポスト・ムーブを活用し、堅実な実用的バスケットを展開するティム・ダンカン。

王朝を築いていたレイカーズを王座から引きずり降ろしたのがダンカン率いるスパーズだった。

レイカーズのように派手でもなければメディアを沸かせるリップサービスもない。

しかしスパーズにはダンカンを信じ、堅実なプレーをするしたたかさがあった。

チームが勝つために自らステップアップしなければならない時と、チームメイトを信じて任すタイミングを熟知している。

そういうリーダーのもと4連覇を目指すレイカーズをプレーオフカンファレンス準決勝で破ると、同決勝ではタレント揃いで優勝する気満々のダラス・マーベリックスをも片付けた。

ダンカンはこのダラス戦、そしてファイナルのネッツ戦で、ともに1試合平均24得点、16リバウンド、5アシスト以上と大舞台でオールラウンドな力をフルに発揮している。

この頃のダンカンの成長の1つにあげられるのが、自身の存在で周りの選手が向上する術を身につけた点だ。

ポストの1対1だけでも手のつけられないダンカンにゲームの洞察力、パス能力、正確な判断力がある。

それだけの能力を持っていることでアウトサイドシューターとしては安心して外で待っていられる。

現にスパーズに所属したデリック・アンダーソン、ダニー・フェリー、そしてスティーブ・スミスらはダンカンとプレーすることでこぞって3ポイント成功率を上げている。

スパーズはダンカンを中心に多くの戦略を組み立てることができ、長期間に渡って強豪であり続けた。

この男がいる限りスパーズは優勝候補であり続けた。

自分がリードしなければならない時には試合を支配し、チームメイトをもり立て、またチームメイトの失敗もカバーする。

いい選手は「チームメイトを上達させることができる者」こととはよく言われる言葉だが、ダンカンはまさにそのお手本のような選手。

実際、身体能力が衰えたとしてもチームを勝利に導ける選手だった。

派手ではないが黙々と仕事をやってのける彼は、レーンのサイドでボールをキャッチし、バックボードを使って得点するリーグの誰よりも上手いバンクショットの使い手だった。

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