101-ブレイク・グリフィン
ダンク王者ブレイク・グリフィンがもたらした衝撃
デビューからNBAを席巻した怪物ルーキー
2011年のNBAで、最も大きな話題をさらったのは新人王ブレイク・グリフィンだった。彼は2009年のドラフト全体1位でロサンゼルス・クリッパーズに指名されたが、ルーキーイヤーは怪我で全休。満を持して2010-11シーズンにデビューを果たすと、その瞬間からリーグの空気が変わった。
208cm、120kg近い巨体を持ちながら、爆発的な跳躍力とアスリート能力を兼ね備えたグリフィンは、リムに叩きつける豪快なダンクで一気にNBAの顔となった。新人王は当然のように彼の手に渡り、さらにスラムダンクコンテストでも電撃的なパフォーマンスを披露。あの「車越えダンク」は、NBAオールスター史に残る名場面となった。
リーグを揺るがした“ダンクマシーン”
グリフィンのプレーは、単なる得点ではなかった。彼のダンクは「事件」だった。
相手ビッグマンの上から叩き込むポスタライズ。アリウープを全身全霊で仕上げる空中芸術。リバウンドからそのまま叩き込む怪力ダンク。
観客はただ点数が入るのではなく、“衝撃映像”を目撃するためにアリーナへ足を運んだ。実際に、クリッパーズのホームゲーム観客数は前シーズンから大幅に増加。平均観客数は1万6343人から1万7742人へと伸び、集客率も85.7%から93.1%にアップ。
当時「ロサンゼルス=レイカーズ」という構図がNBAファンの常識だったが、グリフィンの登場によって「クリッパーズを観たい」という動機が初めて生まれたのだ。
クリッパーズというチームの変化
グリフィンが登場するまでのクリッパーズは、NBA随一の“不人気フランチャイズ”と揶揄されていた。プレーオフ常連でもなく、スター選手が長続きしないチーム。ロサンゼルスという大都市にありながら、完全にレイカーズの影に隠れていた存在だった。
しかしグリフィンが加入すると状況は一変。彼のハイライトプレーは毎晩のようにスポーツニュースのトップを飾り、YouTubeやSNSでも拡散される。今でこそSNS時代に「バズる選手」は珍しくないが、当時のNBAでこれほど動画映えするスターは稀有だった。クリッパーズが「チケットを買う価値のあるチーム」になったのは、グリフィンがいたからこそだった。
ダンクが象徴する“新時代”の到来
グリフィンがリーグに放った衝撃は、単に身体能力がずば抜けていたからではない。NBAの歴史を振り返っても、ダンクでリーグの象徴となる選手はそう多くない。ウィルト・チェンバレンがルールを変えさせ、マイケル・ジョーダンが空中を支配し、ビンス・カーターが「人間ハイライトフィルム」と呼ばれた。そしてその系譜に、ルーキーのグリフィンが堂々と加わった。
当時のNBAはレブロン、コービー、ウェイドといった“勝者”が中心だったが、グリフィンは「勝利」よりもまず「衝撃」を売りにできる存在だった。彼のダンクは観客を魅了し、バスケットボールをエンターテインメントに引き上げる。スターの価値が「優勝リング」だけで語られるのではなく、「人々の記憶に残るプレー」によっても測られることを示した。
チームの未来を変えた存在
グリフィンの登場は、クリッパーズの未来をも変えた。彼がもたらした注目度と集客力は、フランチャイズの価値を飛躍的に高めた。その後クリス・ポールが加入し、「ロブシティ」と呼ばれる時代が幕を開けるのは必然だったとも言える。
ポールのパスとグリフィンのダンクが織りなすアリウープは、NBA史に残る最も華やかなオフェンスのひとつ。もしグリフィンがいなければ、ポールがクリッパーズに来ることも、あの「ロブシティ・クリッパーズ」が成立することもなかっただろう。
弱点と批判
もちろん、グリフィンのキャリアは“ハイライト映像”だけでは語れない。シュートレンジの狭さや、ディフェンス面での物足りなさ、そして何より怪我の多さが常に批判された。ダンクという武器は観客を熱狂させるが、それは同時に身体への負担を伴い、キャリアの長期的な成功と相反する部分もあった。
だが新人時代のインパクトに関しては、弱点を補って余りある。あの爆発力を目の当たりにしたファンや選手は、口を揃えて「グリフィンは怪物だ」と評した。
まとめ:ダンクでNBAを揺るがした男
2011年、新人王とダンク王を同時に獲得し、NBAを震撼させたブレイク・グリフィン。彼の存在は、クリッパーズというチームの価値を変え、リーグのエンターテインメント性を引き上げた。優勝やリングでは測れない、圧倒的なインパクトを持つ選手。それがグリフィンという存在だった。
ダンク一発でアリーナを揺らし、SNSを席巻し、観客を呼び寄せた。あの2011年の衝撃は、今もNBA史に刻まれている。
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