91-ドゥエイン・ウェイド
あの頃のオールスターは、まだ本気だった
今のオールスターゲームを見て「お祭りだから仕方ない」と思ってる人も多いだろう。だが正直、近年のそれは**“お祭り”というより“合同ダンク練習会”**だ。
ディフェンスはほぼ皆無、スクリーンも形だけ、得点はひたすらインスタ映え狙い。観客はハイライト集をその場で見せられてるような感覚になる。もちろん、それが楽しいという意見もあるが、「勝負の匂い」が消えたのは否定できない。
だからこそ、2010年のドウェイン・ウェイドMVPは輝きを増す。
108,713人が見守った“ガチ”の空気
2010年の会場はカウボーイズ・スタジアム。108,713人というバスケ史上最多動員。
あのときの雰囲気は異様だった。スタンドの上の方から見たら選手なんて米粒レベル、それでもコートから漂う緊張感はスタジアムの隅々まで伝わった。
今みたいに「2クォーター終わるまで笑いながらユルくやって、最後の数分だけ接戦ならガチモード」なんてことはなかった。序盤以降は互いに当たりは強く、速攻もパスも本気。ウェイドはその中で28得点11アシストを叩き出した。
本気モードのウェイド
ウェイドはただ点を取るだけじゃない。
ファストブレイクでは疾走し、、ハーフコートでは相手のディフェンスを引きつけてから正確なキックアウト。
ディフェンス面でもスティールを狙い、時には相手のレイアップを本気でブロックに行く。今のオールスターでそんなシーン、何回ある?
あのときは“本気で勝ちに行くスター”がいた。
「盛り上げるために得点を量産」じゃなく、「勝つために全力を出す」プレイヤーがいた。
近年のオールスターとの落差
ここ数年のオールスターを思い返してほしい。
- 誰もディフェンスしない
- スリーは打ち放題
- ペイントエリアは常にフリーパス
スコアは200点ゲーム目前。ディフェンスは形だけで、ほぼ全員がレイアップかダンクをプレゼント。
それを見てSNSは「ディフェンスしろ」祭り。NBAファンがシーズン中に最もため息をつく時間、それが今のオールスターだ。
なぜ本気でやらなくなったのか?
理由はいくつかある。
- ケガのリスク
スーパースター同士の本気の当たりは、興行としては怖い。契約額が跳ね上がった現代ではなおさらだ。 - SNS時代の価値観
勝敗よりもバズるプレーが求められる。インスタで切り抜き映えするアリウープやロングスリーが、堅実なディフェンスよりも価値を持ってしまった。 - シーズンの過密日程
オールスター後のプレーオフ争いを見据えて、選手は体力温存を優先する。
理解はできる。でも、それで「勝負」の匂いが消えたら、オールスターはただのイベントでしかなくなる。
2010年が特別だった理由
ウェイドがMVPを取った2010年は、勝利とエンタメのバランスが完璧だった。
28得点11アシストは華やかさも数字も申し分なし。それでいて、試合は最後まで競り合い、観客も手に汗握る展開だった。
オールスターMVPは「一番派手だった人」ではなく、「一番試合を支配した人」に贈られるべきだ。
今こそ必要な“勝ちとりたい”MVP
近年のオールスターに足りないのは、「勝ちたい」という純粋な動機を持ったスターだ。
2010年のころは地元開催でもなく、個人的な契約事情でもなく、ただバスケの試合として勝つためにプレーしていた。その姿勢が観客を引き込み、MVPにふさわしい輝きを放った。
本来オールスターは、「NBA最高の選手たちが本気を出すと、これほど面白い」という見本市であるべきだ。
あれから十数年、オールスターはどんどん“真剣勝負”から遠ざかっている。
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